日別アーカイブ: 2020/02/14

日々雑思 おめでとうセシー

朝、暗いうちに起き出す。犬を庭に放し3階へと上がる。タライにつけ置いたシーツを丁寧に、セシリアに教わった通りに洗う。トイレを掃除し、廊下を掃く。すり減った箒を見て、新しい箒を用意してやればよかったと思う。来る者すべてがこの宿はキレイだと言った。それはセシリアによるものだ。モップをかけ終わるころ夜が明けた。下に降り朝食の支度をする。扉を開け、時計を見ると7:15であった。セシリアはもう来ることはないのにと苦笑してしまう。犬も玄関に座って彼女が来るのを待っている「もう、セシーは来ないぞ」と声をかけると勘違いをして門の方に行ってしまった。ゴミ屋の鐘の音が聞こえ、思わずセシーと呼びそうになる。ドーラがセシーはと聞いてくる。彼女はやめたもう来ないと伝えた。

久しぶりに味わう渾身の充実感。一つの夢を叶えることが出来た。旅に出るとき決めた目的の一つであった社会貢献。たった一人ではあるけれど、4年の月日を費やしてしまった。この地で稼ぎ、その金で夢を叶える。無理だと何度も思った。しかし、その時は唐突に訪れた。宿に村役場から人が来てセシリアはいるかと言う。彼女は訳もわからず役場へと向かった。夜、セシリアが来た。「あなたにとって悪いニュースだ」「なんだ言ってみろ」「私は働けない」「どうした?」「学校の先生になれる、でも私はここが心配だ。ここで働きたい」「なに!それはいいニュースではないか。おめでとう」「でも、ヒデキは困るであろう。私はヒデキも心配だ」言ってポロリと涙している。「セシー、夢が叶うのだ、それはオレにとってもとても嬉しい。心配などするな。先生になれ、いつからだ」「明日だ」また急な話だと思ったがそれはとても良い知らせであることは間違いない。「ヒデキは私のことを友達ではないと言うが私はとても良い友達だと思っている。ヒデキはいつも私を助けてくれた。私はヒデキを助けたい」「お前は友達ではない、とても良い心根を持った女中だ。だが、お前は今日をもってクビだ。ここに居てはいけない。せっかく掴んだ夢を離してはいけない」「でも」とポロポロと泣いている。やはりこの娘を選んで良かった。応援した甲斐があったと嬉しくなった。「これからも友達だなビデキ」「考えておく、ツライ事があるかもしれないが、オレは疑いなどこれほどもない。お前は立派な先生になるよ。でももし、助けが必要な時にはここに来い。全力で助けてやるわ」「グラシアスヒデキ」「たまには遊びに来い、頑張れよセシー」

生意気な小娘の夢が叶った。自分のことのように嬉しい。と同時にさみしさと喪失感もあった。ここまで苦楽を共に頑張ってきた相棒がまた去っていくこととなった。少し気が抜けてしまった。この国でやるべき事がなくなった気がした。

気持ちの整理がつくのは、もう少し経ってからであろうか、新しい女中を雇うか、一人でやっていくか迷う。宿はまた振り出しに戻ってしまった。でもそれは新しい試みへのスタートなのだと言い聞かせる。去年の暮れからこの宿は変わった。驚くほど客の満足度が高くなった。自分のやりたい事が明確になり安定した。それが客にも伝わっているかのよう感じていた。セシーもよく働き、楽しそうだった。それが、唐突に終わった。これでいいのだ。時が熟し始めたのかもしれない。kamomosi の新しい試みはいったいどのようなものになるのかはまだわからない。でも、きっと僕を楽しませてくれる事だけはわかっている。

さらばセシー。おめでとう。僕は君をとても誇りに思っているよ。そして君はこの旅で出会った最高の友達だ。そして誰よりも君の成功を信じているよ。