日々雑思 たまには旅の話を 後編

宿から客が具合が悪くなったと連絡があり、急ぎ戻ることにする。一本早いバスに乗り国境が開く前にイミグレに着いた。グアテマラに戻る。ここからであればうまくすれば夕方前には宿に戻れる算段であった。

うまい具合にチキンバスに乗れた。金をはらう時、乗り換えの場所は閉じられていていけないかもしれないと言われる。少し行った所でバスが止まった。車掌が少し慌てた様子で皆をバスから降ろす。バスは慌ててUターンしているが道が狭く何回も切り返している。ピックアップトラックに乗った男衆が棍棒を持ってバスの前に止まった。怒鳴り声がして運転手が袋叩きにあっている。何事が起きたのだとわけもわからぬままに道を進みその場を離れる。道の向こう側からも人々が歩いて来る。尋ねるとデモをやっていると言う。

しばらく行くと道路が封鎖されていた。嫌な予感がした。この時期はグアテマラ中でデモが起きる。いつ、どこで始まるかは前日の夜にならないとわからない。先ほどのバスはバリケードを突破してしまったのでやられたのだとわかった。

いくつか小さな封鎖を抜けた所でデモの拠点に着く。聞くと通らせない、いつ開くかもわからないとぶっきらぼうに言っている。爆竹があちこちで鳴らされ少しエキサイトしているので大人しく待つことにした。女中に状況を調べてくれと頼む。携帯に課金しておいて良かった。ここまで10キロ程も歩いたか。少し疲れたので飲み物を買い足し、スナック菓子を食べた。

1時間ほどしたところであたりがざわついた。どうやらデモを解除するらしい。急ぎ支度をして封鎖しているところに急ぐ。これがいけなかった。人々はパニックになり我先にと大荷物を抱えて走り出す。先にいるチキンバスの車掌達も殺気立っている。自分のバスに1人でも多く乗せようと客の取り合いとなっている。人の流れに逆らえず進むと車掌3人が腕やバックを引っ張ってきた。その勢いに負け転んでしまう。その時誰かがバックを引ったくろうとしている。強引に振り払い、思いっきり殴りつけた。まだ若い青年はクタンと膝から崩れた。辺りが騒然となる、近くにいた警官に泥棒だと叫ぶ。警官が行け行けと手振りをしていたので、近くのチキンバスに飛び乗った。バスはすでに走り出していたので、その場をすぐに離れることができたけれど、留まっていたら厄介なことになっていたかもしれないと安堵した。

デモの混乱でバスも無く。随分と待たされ途中の町まで行くのが精一杯であった。宿に連絡して事情を説明する。病人は女中が診療所へ付き添ってくれ、心配なさそう。新しくきた客もいるので明日には帰ると伝えた。

翌朝、村までのバスに乗ろうと宿で待っている時、今日もデモがあると言われる。どうしても今日には帰らなければならないので出ると伝えた。バスターミナルに着くと、案の定人集りとなり、皆右往左往している。デモをやっている交差点まで行くバスをやっとの事で見つけそれに乗る。宿にいた客が村まで来ると言ってついているので少し心配だ。交差点のはるか手前で案の定大渋滞となりバスを降りた。近くのトゥクトゥクに乗って裏道を通って行く。あぜ道のような細道を進み、交差点を見渡せる丘の上で降りる。これ以上はトゥクトゥクも進みたくないようだ。丘の上からしばらく様子を見る。下からきた老人が、車は今日は通れない。石を投げられ危険だと言う。歩けるかと聞くと大丈夫だと言うので客を連れ、足早にデモの中を通り抜ける。上から見ていてアイス売りなどがデモの中で鈴を鳴らしていたのでまだ落ち着いている事は分かっていたけれど昨日のこともあるので用心に越した事はない。

デモを抜け幹線道路を進む。車はない。山の方から人々が降りて来るので色々と聞くが人によって言うことがまちまちでよくわからない。かと言ってデモの中で待っていれば、また昨日の二の前になってしまうので、進むことをえらぶ。

途中、村の者と会う。2時間程行ったがバスはなかった。戻ってデモが終わるのを待つ、お前もそうしろと言われたが進むことにする。

町を離れると穏やかになる。ハイウェイをひたすら登る。連れている者は大きなバックパックを担いでいるので辛そうだ。少し休み、荷物を持ってやり、先へと進む。しんと静かな山間を登って行くのは気持ちいい。大きなバックパックが背中に食い込む感触がいい。女性用なので少し小さいがこうして大きなパックを担いで歩くのは楽しい。風が心地よく、田舎の風景の中に溶け込んでいくような感覚がいい。

5時間程歩いてやっとデモの始点、ほぼ山の頂上に着いた。群衆は穏やかで昨日とは違う。少し行くとチキンバスがいた。聞くと村の上にある村まで帰ると言う。交渉して乗せてもらいバスを乗り継ぎ村に着くことが出来た。

2日で30キロ近く歩いたことになる。ビーサンの底が減ったこと以外、筋肉痛もなく楽しさだけが残った。肩に残るバックパックの重みが旅をした気分に彩りを添えた。

快適とは言えない旅もまた楽しいものであった。普通なら出かけずに待機する所を強引に進むことの是非はあるかと思う。それでも普段味わうことのないグアテマラを感じたことはいろいろな意味で新鮮であった。道行く人々は気さくで苦労を共にする仲間のようであり、群衆の若者はうざったいほどチーノチーノ(中国人又は東洋人)と囃し立てた。僕の履いていた民族衣装のスカートをリメイクしたアラビアンパンツを見て、女衆はキャッキャッと笑い、パイナップル売りの青年は交差点から歩いてきたと言うと周りの者に驚きと共に告げた。群衆の幾人かは記念撮影をせがんできて、僕らを驚かせた。

また一つ、この小さな旅で僕は変わった。次はどんな経験ができるのであろうか。いつもの小さな旅であったけれども驚きに満ち満ちた数日間であった。メキシコの近代国家ぶりに感嘆し、グアテマラの第三世界ぶりに居心地の良さを満喫する。

宿に戻り、留守の間に来た客に挨拶をして共に歩いた客の食事を用意する。明日の朝来るであろうセシーに礼を言わなくては。買ってきた食材等を片付け横になったが目が冴えてなかなか眠ることが出来なかった。

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