日々雑思 雨の日の釣り師のために

今日は午後から雨。雲が垂れ込めて山水画のように世界から色をなくしている。風はなく天から雨粒が真っ直ぐに落ちてくる。午前中湖で泳いだのでプールに入った後のように身体がポワーンとしていて久しぶりに子供の頃を思い出す。どの位潜れるのかと試したが思ったほど深く潜れなかったのは歳のせいか標高のせいか。引っかかったルアーが回収できず失った事が悲しい。テラスに腰をおろしコーヒーをすする。雨にくもる湖を眺めながらあれやこれやと思いを巡らすのはことの外楽しい。

味噌漬けワーム

昔、津久井湖でワームの釣り方を晋作くんに習う。当時流行っていた確かFS454というワームを買った。今では当たり前のように使われる集魚剤のはしりでなんだか味噌漬けのようだった。

夕方の湖畔に立つ。買ったばかりのフェンウィックの竿とアンバサダーのリールだった。当時はイトに黄色やオレンジの色が見やすいように付いていて僕はオレンジがお気に入りだった。「ゆっくりズルズルと引きずって竿一本分引いたら少し待って聞いてやるんです、コツコツとしたりイトが沖に出て行ったら37つ数えてセーノで合わせるんですよ」言われた通りにやってみるとコツコツと魚の感触が。イトもスルスルと沖に向かって引っ張られていく。焦る気持ちを抑えてリールのスプールをフリーにしてイトをくれてやる。心の中で7つまで数えて合わせた。初めてワームで釣ったバス。この時の釣果は覚えていない。暑かったのかも涼しかったのかも忘れてしまったけれど今でもあの時のシーンだけは鮮明に覚えている。この時釣った沼本ワンドはこの後通い詰める僕のお気に入りとなった。

スライダーワーム

「山中湖の夜釣りはこの赤いワームがバツグンですよ、なんたって安いじゃないですか」釣り仲間のオーシャンに言われるままにスライダーワームと同メーカーが出すジグヘッドを買った。それまで僕は頑なにベイトリールの釣りにこだわっていたが繊細な釣りのうまいオーシャンに教えを請うためにスピニングのセットを買った。確かナイヤードと言うメーカーで少し硬めのワンピース。行きつけの釣具店の店主ロッパに勧められるまま購入した。オーシャンはバイトの金をすべて釣りにつぎ込むほど入れ込んでいた。それだけにコスパと釣果に対するこだわりは尋常ではなかった。そんなオーシャンが言うスライダーワームは確かだった。しばらくしてこのワームは誰もが使うこととなる。山中湖なぎさ、僕らはそう呼んでいた。桟橋の上に立ち真っ暗な湖に投げる。「藻穴に落とすんです。ゆっくり藻から外してやってください」ブリンブリンと引っかかるワームに苦労しながら竿から伝わる感触だけを頼りに釣る。ゴンと竿の先を持っていかれた。ズッシリとした感触にさぞ大きかろうと釣りあげると藻がバスの頭にカツラのように絡みついていた。どおりで重たいはずだ。一面藻だらけの山中湖で僕らは明け方まで夢中になって釣りをした。

バスハンター

週末の河口湖。釣具店の店主のロッパの同級生通称ボッチ。いい兄貴分であり随分と釣りに連れて行ってもらった。店が終わった9時過ぎ続々集まる釣り仲間。車に分乗して河口湖へ。

丸栄前が僕らのお気に入り。クランクベイトというルアーはクチビルがついていて引くと潜ってくれる。ダイワが出した新製品のバスハンターミラクルシャインが大爆発した。あまりの釣れっぷりに箱買いしてしまうほど良く釣れた。その釣れっぷりはあまりに魚に噛み付かれるので色が剥げてしまうほどだった。当時もリリースが当たり前であったけれど敢えず釣れた魚はストリンガーと呼ばれる針金をエラから口に通して水につけて活かしておいた。その夜も順調に釣果は伸びた。僕はストリンガーを二つ買い、繋げて沢山の魚を付けられるように改造しておいた。釣り上げた魚を繋げておこうとストリンガーを結わえてある岩の所へ行くと見当たらない。辺りを探してもない。あまりに魚を繋げすぎて岩から外れてしまったのだ。「ボッチさーん魚、逃げちゃった」「えっ!うひゃひゃ付けすぎたよ、あーああの魚繋がったまま皆んな骨になっちゃうぜ」その後僕はストリンガーを使うのをやめた。

ボッチさんとはあまりにひどい思い出が多すぎてここには書けない。台風の中の釣り、大雨で山中で閉じ込められ、冬の湖に落ち、数々の失敗を共にしてきた。

 

スプリットリグ

苦手な釣りを克服するために晋作くんと芦ノ湖へ。釣り方のイメージが湧かず苦戦している僕を横目に晋作くんはバンバン釣り上げている。「オモリを落ちていくエサにみたてて、小魚がそれを追いかける。エサが湖底に落ちて見失いボケっとしているイメージですかね」彼と僕の会話は他人が聞いても「???」となってしまうこともしばしば、よく釣具屋の店主のロッパに笑われていた。

この釣り方はマスばりを使っていた。僕にはあの長いワームにこんなハリをチョンとかけるだけの仕掛けがなんとなく嫌いだった。なんだか餌釣りをしているような気がして抵抗があった。当時バスプロになって間もなくでトーナメントで釣るためにはそんなことは言っていられなくなり晋作くんに泣きついた。亀ヶ崎から黒石にかけてボートを流しながらひたすらスプリットリグを投げるのだけど何故か僕には釣れない。ぼくが投げた後にもかかわらず晋作くんは難なく釣り上げている。焦る気持ちを抑えて言われた通りにやっているとイトがスーッと走った。イメージが掴めた。釣りはイメージがとっても大切。明確なイメージがあるほどなぜか魚が釣れる。あれほど苦労したのにその日、僕は釣りまくった。不思議なものだ。

僕らはこの頃から互いの事がよく理解できて、興味のある釣りを片端からやるようになった。釣りが上手いのは常に晋作くん。僕は彼の背中をいつも追いかけるように釣りをしていた。僕の知る釣り人の中でもずば抜けうまい。彼が苦労している姿をついぞ見た事がない。

プロでの活躍はなかったけれどバス釣りは僕のお気に入り、沢山の思い出が詰まったこの釣りは頭を使い、すべて理詰めで考えれば答えが出る。グアテマラの湖にブラックバスが居ると知ったのはここへ来てすぐ。いつかは釣ってみたいと思っていた。その夢が叶った。久しぶりに手にした道具達。湖畔に立ち5分で僕は魚を手にしていた。初めて釣った相模湖のバスのように嬉しかった。それから3日間、僕は知りうる限りの釣り方で釣りまくった。それは喜びてあり、充実であった。この時のために僕は釣りをしてきたのだとさえ感じた。その釣りはこれまで一緒に釣りをしてしてくれた友人達から伝授された集大成であった。3日目が終わった。心地よい疲れと充実感。釣りをしてきて良かった。おそらく僕は死ぬまで釣りを続けるだろう。

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