日々雑思 旅先で死んではいけない

事故で友人がなくなった。旅にはトラブルはつきものだから受け入れる以外に出来ることはない。でもなぜそれが自分ではなかったのかと感じる。若く、将来があり、必要としてされている者が死に、役に立たない者ばかりが生きながらえる理不尽。「おはようヒデキ、どうした、まぁここに座れ」チョナがいつものように声をかける。「お前に悪い知らせだ、お前の生徒が死んだ」「っどうして」「事後だ」「いつだ」「今日だ」目頭が熱くなる。チョナも同じ。「いい若者だった。何故神は善き者から殺すのだ。カフェはまだ7つだった、彼もまだ若い。何故自分ではないのだ。神を信じないオレでいいだろうに。地獄に行くこともかまわない。ウソつきで暴力も使う。黒き心を持つ自分でないのだろう、神はクソだな」「ヒデキ、こころを強く持て。強くならないとダメだ」「あーわかってる。大丈夫だ心配するな。俺の心は強い。誰よりも強い。ただ最近感情が邪魔をする。優しい気持ちを取り戻したいなどと思わなければよかった。それだけだ。また来る」チョナがなにかを言っているがそのまま去る。事故だとわかっていても、憎しみがフツフツと湧いてくる。それが自身に向いたものなのかがわからない。理不尽なことが多すぎる。喜怒哀楽は生きる邪魔にしかならない。日本で暮らしていれば知り合うことのなかった人々。大半の者が自分より若く将来に向けて生きる喜びを持っていた。宿などやらなければよかった。客と話などするべきではなかった。彼等の思いなど聞かなければよかった。

宿のベルが鳴る。出ると2人の若者が立っている。すぐにピンとくる。聖書を片手ににこやかに笑っている。聖書の一文を見せ、苦しみから救われるためにと穏やかな声で偉そうに説教を垂れる。貴方はどう考えますか?と聞くので「オレはそれを苦しみだと思っていない。当たり前だ」と答える。少し驚いているので「ここでは普通のことであろうが、恐喝、盗み、ウソ、殺しお前らグアテマラ人には日常だろ、それが神の意志であるなら喜べ。オレには関係ない、ここに以前来た女もお前らの仲間だった。「神がどうとか」と言っていたがグアテマラ人に殴り殺されたよ」「彼女達は残念だった」「そうだな。聖書のことは知っている。キリスト教でなくとも知っている者もいるのだ、オレに助けは不要だ、頑張れよ」グアテマラ人がよくする言い負かされた時のえへら笑。この顔を見るのが大嫌いだ。意気地のない安物のプライドにすがって逃げるしか能の無い愚か者。彼等に罪はない。知っている。きっと善き心を持っているのであろう。ただ自分は得体の知れない偶像を信じるほど弱くない。空に向かって叶いもしない願い事をほざく暇があれば自らの手で火の粉を払うことを選ぶのみ。

バイク旅の知人の友人が行方不明になる。友人はyoutubeでビデオを作り公開した。英語とスペイン語で撮られたそのビデオには友人の思いが詰まっていた。決して上手くはないスペイン語であっても彼の思いが伝わる。旅をしていると年に1回や2回はこうしたニュースに触れることになる。バイカー、チャリダーという愛称で呼ばれる旅人はバックパッカーからも特別な目で見られる存在。その旅の過酷さを知っていればこそ。無謀と言われることもあるやもしれぬけど、彼等の旅力は相当なもの。無補給路を何百キロも行かねばならない時の勇気、故障などのトラブルに対応する力、迷った時の決断力を後押しするのは積み上げてきた経験。ロスト、ガス欠、水キレ、野宿、天災、疾病、犯罪こうした災いに一人で向かい合う。時に経験値を超えたトラブルに見舞われた時、旅の力が試される。ただ運に任せるのではなくギリギリまで切り抜ける努力を続ける。だからこそなにか起きた時の仲間を救うためのアクションははやく強固、それは国籍や人種、付き合った時間などまったく関係ない。世界のどこで起きようと出来ることを各々が考え行動に移す。旅人が置かれている状況が理解できればこその思い。行動した者だけが知る思いやり。その思いが届いてくれることを信じるのみ。

旅先で命を落としてはいけない

神に選ばれてはいけない

他人に安全を託してはいけない

恐れてはいけない

侮ってはいけない

全ての知恵と経験を振り絞って

最後まで諦めない

死んではいけない

どんなに傷ついても岸にたどり着き

喜びの家にあって家族との再会を果たさなければいけない

全ての旅人の安全を願って

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