日々雑思 相棒を失ってしまった

大切な相棒のカフェが近所のピットブルに殺されてしまった。

喪失感が強すぎてなにも手につかない。こんな時は形式ばった儀式をすることで受けいる事が出来ると聞いたことがある。手順や作法に則ることで前に進む事が大切なのだそうだ。それに意味があるとか無いとかではなく、そうした動作を通してしか解決しないことが世の中にはあるのだという。「ご愁傷様でした」と言ったってなんのことやらさっぱりわからなくてもその言葉を自分の体を通すことで、その場の誰もがなんとなく居場所を見つけられる、そこにいる意義を持てることができることが必要だそうだ。悲しいことに耐え続けられるほど人の心は強くない。受け入れたくなければそれもいい。でも時間をかけてでも受け入れようとすることが生きるということなのだそうだ。

カフェが死んだ。もうそれは厳然たる事実。僕は「よく頑張ったなぁ」としか言えなかった。声をかけたところでどうにかなるものでもない。硬くなってゆく身体にすがって泣いた。本当にカフェはよく頑張ってくれた。夜が明けて僕は庭に穴を掘った。雨がやみ、まだ誰も起きていない朝。穴を掘っていると身体が暖まり汗をかいた。掘ることに専念すると目の前の現実から逃れることができた。

セシーが来た。彼女の顔を見たらもうダメだった。みっともなく泣きじゃくりながら彼女にカフェのために祈ってくれ、僕は祈り方すら知らないんだと懇願した。彼女はカフェが天国に召されるように丁寧に祈ってくれた。カフェを階下に運び、別れを告げた。穴の底に横たえ、上から土をかけた。そこだけまっさらになった土がむき出しになっていていた。一番大きな石を置き、丁寧に墓に仕立てた。でも、そこに意味など見いだすことは出来なかった。

いつも通りにセシーに朝食を用意して、テーブルに着く。途端涙がこみ上げてきた。先にセシーが「わかるわ」と言った。僕らが食事を取るとき決まってカフェはセシーの横で飛び跳ねた。僕らは黙ったまま食事を済ませた。いつもはさっさと帰るセシーが残っている。僕は彼女に祈り方を教えてくれと頼んだ。彼女が帰った後、僕は何かにすがりたかった。彼女はノートに祈りの言葉を書いてくれた。そしてメルカドに買い物へ行け、1人で居るのは良くない。外に出ていればいいと言った。

この小さな村のすべての場所にカフェとの思い出が溢れていて、とてもじゃないが外に出かけることなど出来ない。テラスに腰掛けた。僕がそこにいるとカフェはいつも隣に来て静かに座っていた。タオルを片付けに部屋に行く。さっきまでカフェが横たわっていた毛布を持つと手にノミがついた。どこにいてもカフェがそこにいる様に感じても、もうそれは現実ではないのだと思うとたまらなくなった。

夕方になってグラシエラが心配して来てくれた。彼女もまた一緒に祈りましょうと言うと僕の手を取って丁寧に祈ってくれた。彼女手の温もりがとても心地よく、心がすこし穏やかになって行くのを感じた。僕はキリスト教徒ではないけれどこうした優しい気持ちがありがたかった。祈の力はあるのだろう。それは経でもいいし、坊さんの説法でも、祈りや懺悔であろうが、人が持つ悲しみを癒すためにこうした言葉があるのかもしれない。

もう2度とカフェと散歩に行ったり、オヤツを分け合ったりすることが出来ない。この2年半の間、いつも僕の側にいてくれた。こんなに短い時間だったのに、僕らはとてもよく通じていた。カフェの思いは手に取るようにわかったし、カフェもまたわかっていた。それだけに救えなかった後悔の念、感謝の気持ち、喪失感がないまぜになってしまい自分の気持ちをコントロールすることが出来ない。

この先、この気持ちに整理がつくことはわかっているし、残念なことだけど数年もしたらカフェの顔も朧気になるに違いない。この世は生きているもののためにしかない。死んだら腐って土に還るのが定めだから。あの世というものがあるのであればカフェはそこのものとなってしまったのだ。生き物の命はいつかは尽きる。でもなぜそれがカフェだったのか。理不尽だけが残ってしまった。

様々な人が来てくれ、色々な言葉をかけていただいているが、素直に受け入れることは出来ない。まだそんな気持ちにはとてもなれない。これではいけないと思うけれど。

書くことで気持ちの整理がつくのならとなるべく淡々と書いたつもり。でも読み返してもわからない。カフェの居ないkamomosi はなにかがごっそりと抜けてしまった。

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2 thoughts on “日々雑思 相棒を失ってしまった

  1. あおき

    ひできさん
    私もショックで驚きました。
    いまとても辛いですよね…
    こんな事しか言えなくてごめんなさい
    ご冥福お祈りします。

    返信
    1. HIDEKI 投稿作成者

      あおきさん
      ありがとうございます。どうすることも出来ないこともあります。受け入れていくしかありません。
      もう少しここで暮らさなければならないと思っています。でも僕は元気になってきています。ご心配なく。

      返信

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