新しい物差しを手にいれた件

久しぶりにたまげてしまった。何がきっかけでそれを知ったかは、あまりにも驚いてしまったので忘れてしまったけれど、彼女の説明はこうだった。

「神が私たちを作ったのよ、ヒデキ、猿じゃないわ」
「でも学校では…スペイン語でなんて言ったかなぁ、セシーDarwinを知っているだろ」
「誰、あっダルウィンのこと、もちろん。私たちが猿から進化したって言うあれのことでしょ、あんなのありえないわ、それとビックバンとかここの村では誰も信じていないわよ。学校では習うけど、先生だって「本当は違うけど」って授業のときに言っているわ」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!マジ?」
「だってどやったら、猿が人になるの、ありえないでしょ」

僕はあまりの衝撃に言葉が継げなかった。どう僕の常識を彼女に告げたものか、頭ごなしに否定など到底できっこなので、これは厄介だけれどもっと聞いてみたい、彼女の考えをどうしてももっと聞きたかった。僕はノートと鉛筆を用意する。何が厄介なのかというと進化論をスペイン語でどう説明すればいいのかわからなかったから。

「セシー、恐竜を知っているかい?」
「もちろんよ、あなたは神はいないって言うけどどうしてそう思うの、私に説明して見なさいほらほら」
「彼らが生きていた時代に人間はいたかい、それとも神が僕らを作ったのはそのあと?」
「知らない、でも全滅したんだから、そのあとでしょ」
「神が作ったのならなんで恐竜の時代に僕らはいなかったんだろう、まぁいいや。セシー、僕らも動物と一緒で、4本の手足があって、耳や目を持っているよね。他の犬や猿も似ているよね、虫は体が3つに別れているし、足も6本やたくさんあるから違う生き物だよね」
「……..]
「ガラパゴス島を知っている?」
「知らない、どこ」
「じゃぁいいや、太平洋の小さな島だけど知らないならいいよ、問題ない。オーケーそれじゃ、ここはアフリカ、ヨーロッパ、アメリカ、日本はここ、オーストラリア…」

僕は世界地図を書きながら大陸の絵を書いた。

「むかーし、むかし、僕らはここで生まれたと言われてるんだ。アウストラロピテクスという最初の人間」
「本当に!」
「なぜ、それがわかったかたというとね、あちこちの地面を掘って骨を探したんだ。見つかった骨を調べたらなん年前のものかがわかるからね」
僕は自分が知っている猿人の見つかった場所と年代を書いていく。彼女はちょっと驚きながら興味深そうに見ている。

「ヒデキ、どこで習ったの、全部覚えているのか」
「学校だよ、全部じゃないし、間違っているかもしれないでもね」

僕は世界地図に書き終えると矢印を書き込んだ。

「ほらね、人類は旅をしたんだ。ここからこう、こっちからもこう、そしてグアテマラにも」
「はーん」
「もし、神様が僕らを作ったとしたら全部おんなじ年代になると思うんだ。僕らは肌の色が違うだろ、ここは黒、ここは白、ここは茶色、ここは黄色、どうしてだろね、例えばここ、アフリカは黒だよね、どうしてだろ、白かったら真っ赤にやけて痛いでしょ、だから黒くなって気候に適応したんだよ、旅をして北にいくとその必要がなくなって白くなったんだ」
「本当に!、アメリカ白いわ、でも途中で日本は黄色いじゃない、あなたは黒いけど」
「うん、僕はもうグアテマラ人だからね、アメリカはイタリアやイギリスから100年くらい前に引っ越してきたんだ、アメリカにはインディオが先に住んでいたのだけれど、彼らは追い出されちゃったのさ、だから彼らは君たちと似ているでしょ、僕らは旅をしながら変わってきたんだ、気候によっていらないものを捨てて、必要なものを手に入れてきたんだよ。イグアナを知ってるだろ、ここのは陸にしかいないけど海に住んでいるイグアナもいるんだ。彼らはご飯を海に食べにいくことを選んだんだ、だから水かきがあったり、流されないように爪が伸びたりしてるんだ、それに最近は陸と海と両方いける奴が出てきたんだよ、それが進化論」

彼女はとても面白い話を聞いているように見えた。僕の言葉に素直に驚き、まるで初めての話を聞いているかのようだった。

「キリストっているじゃない」
「ヒデキはいたと思うのか、それともおとぎ話だと思うのか」
「いたと思うよ。35、6歳のガリガリに痩せて血だらけのキモいおっさんだよね」
「ノー、ぜんぜん違うわ」
「彼は”ナザレのイエス”と呼ばれていて、実在したと言われてるよ。彼が奇跡を起こしたかどうかは知らないけど、一旦、死んで7日後に」
「3日後よ」
「あーごめん、3日後に生き返ったんだろ、ゾンビだな」
「ノーヒデキ」
「君たちは聖書を持っているだろ、でも聖書にはもう一つ種類があってここにいる人たちが使っているんだ」

僕は世界地図のイスラエルを刺した。

「その本には人間が悪いことをしたから、神様が怒って洪水を起こして全てを滅ぼすんだ。でも神様に選ばれた動物と人間が船に乗せてもらって助かるんだよね」
「あ〜ん、#$%&’のことね」
「なんだって?もう一回、まぁいいや。昔、ローマ帝国で王さんに仕えていた家来がいて、ある日王さんから何か皆の衆をうまくコントロールできる方法はないものかと聞かれたんだ、家来は帝国を出てあちこちを探して回ったんだ。そして見つけたのがこの本”旧約聖書”だよ。彼はそれを持ち帰って王さんに「いいもんみっけました」と言ってその本を渡したんだ。王さんは「こりゃいいね、でも問題が一つあるじゃないか、助かるのはユダヤ人だけなのはいただけないなぁ、なんかいい考えないの」と言う。彼は「それじゃ、こうしませう。救世主伝説に書き直しちゃいましょう。ケンシロウとラオウ…おっと間違えました。最近イエスって奴がいるんですけど結構有名人でして、彼のこと使っちゃいますね、復活神降臨は受けますよ、はいコレ」と言って
新訳聖書を出したんだ。王さんはたいそう喜んで「これこれこれ、満足じゃ、褒美をくれてやろう、お前さんが死んだらバチカンに大きな墓を作ってあげよう、パウロ君」」

僕はセシーの顔色を見た。彼女は興味津々で話に食いついている。

「そして君たちが使っている聖書はできたんだ、マルティンルターっておっさんがラテン語で書かれた本をドイツ語に書き直してみんなが読めるようにしたんだけどバチカン怒っちゃってね、でもカトリックがイヤになっちゃったイギリスの王さんとかが作ったのが君たちのエバンヘリコ(プロテスタント)だよ。もちろん僕は君たちが宗教を持つことは尊重しているし、いいことだと思うよ、僕が話したのは歴史?、事実?本当のことはわからないけど、勉強ではこう言われてるよ。ここには二つのことがあるんだ。歴史や史実と宗教や人の信じる心のことなんだ。この二つは別のことだから、でもねセシー知識はとっても君の人生にとって大切なものだから、むやみに否定や拒否はしてはいけないんだ。この二つの話は別のものなんだ、一つはキミの脳みそに入れておけばいい、もう一つは君のコラソン(ハート)にしまっておくことなんだ」
「ふ〜ん…………………..」

彼女が納得したとは思ってもいなし、彼女の信じるものを壊してしまったかしらとちょっと心配になったけど彼女は何かを感じたように見えた。それでも彼女は神を信じているし、それはそれでいいのだ。神でもいなけりゃこの場所で一生を過ごすことなんて到底できないのだから。僕は信仰を持たないので、”神”と言うものがピンとこない。ただ、教会で毎日のように一心不乱に何かを唱えているのを見ていて、こうした単純作業が人の心に何かを植え付けるにはとってもいいのだと言うことはわかった。進化論を信じない人に出会ったことは僕にとってとっても大きな喜びだった。僕の旅はまた一つ新たな物差しを手に入れることができた。

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