狂犬病追加接種のその後

先月、犬に噛まれて念のため狂犬病の追加接種を受けることにした僕。今日は4回目の接種日。朝、仕事をセシリアに任せて僕は病院へ。診察室に入り、女医さんが日付を数えている。そして「あなたの接種日は今日じゃない気がするの」という。僕は「今日は4日ですよね」と念を押し、紙に書かれた日付を再度確認した。

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狂犬病は予防接種をしただけでは十分ではありません。海外で実際に咬まれてしまった場合は次の日程で4週間に5回の追加接種が必要となります。

咬まれた日
3日後
7日後
14日後
28日後

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女医さんの言うことには「咬まれた初日は当然、3日後もいい、でもその次の接種は3日後から数えて7日後に接種したんじゃないかと思うのよ」なんだかすごくあやふやで心もとない。僕は「ドクターに言われた通りにきたのだけれど」というと「ちょっと待ってて、今、ドクターに確認してくるから」と言って部屋をでた。少ししてドクターと共に戻ってきて2人でカレンダーとにらめっこしながら「ウノ、ドス、トレス、クワトロ・・・」と日数を数えている。ドクターは「この日付でいいはずだ」と言って部屋を出て行った。ちょっとちょっと、これでいいはずだってどういうこと。今日だと言ってよと不安になる僕。僕は記憶を頼りにあれどうだったっけか、接種日の数え方の基準日は初日だったか、接種を受けた日からだったのかと頭を巡らすが定かでない。女医さんも依然として疑っているようで「疑問がある」という始末。「ちょっと待ってて、本を持ってくる」と言い残し再びどこかへ。帰ってきた女医さんの手には医学書が。彼女は狂犬病のページをめくる。たまらず僕も一緒に本を読む。接種日の書かれた場所を二人で読む。が、僕のスペイン語力が正しければ咬まれた日からだと読めたのだけれど。彼女はいまいちピンときていないようだ。そして「他のドクターに聞きに行こう」と言い出し、僕にも一緒に来いと言う。ここにきて、僕はこの人ほんとに女医さんなのかと疑問が生じた。「あなた女医さんですか?」と聞くのも失礼ではあるので、僕は「あの〜先生・・」と聞くとさっと振り向いて「ハイ」とシャーシャーと答える。じゃぁ先生なのだと思い直し、他の先生の元へ。聞くと先生はドクターの言う通りと即答する。僕は「以前はもう少し長期間に渡って接種を受けていたような気がするのだけれど」と聞くと。「あ〜うん。以前はね、でも今は変わったんだ、そう変わったんだよ」と言ったきり遠くを見つめるような目になって、口元に笑みを浮かべている。僕はグアテマラこえ〜と思いながら診察室へと引き上げた。診察室の前のベンチに服を血だらけにした白人女性が座っている。見ると手には動物に咬まれた傷があってガーゼで血を拭いている。「どうしたの」と聞くと「犬を散歩させている時に他の犬と喧嘩になって、仲裁に入ったら咬まれてしまったの」と言う。「僕もだよ20日くらい前、だから狂犬病の注射をしにきているんだ」と言う。「そうね、それがいいわ、私もやってもらわなきゃだわ」看護婦がきて彼女は別の診察室へと行ってしまった。
部屋に戻った女医さんと僕。彼女は「さぁこれで疑いは無くなった」と言って注射器に薬液を入れて僕の左肩にブスーと針を立てた。「ここには狂犬病はあるの」と僕は聞く。「う〜ん、ないわね」と彼女。彼女の答えには納得させる力がない。僕は絶対に狂犬病はあるなと心で思ったけれどそれを出すことはしなかった。

小さな村で村人だけが知っている狼男伝説。村医はそれを知りながらひた隠しに。咬まれた旅人は急に村中の犬が自分を恐れ始めたり、朝目覚めると裸で泥だらけの足に驚く。次々と起こる猟奇殺人。満月の夜、ついに旅人は狼男へと変異し、ハンターに狩られる運命に。
「さぁ、終わりよ、18日にまたいらっしゃい」と女医さんに言われ僕は妄想から覚めた。
ともあれ、僕の4回目の接種は終わった。あと1回僕はあの注射を受けないといけない。宿に戻った僕はすぐに日本語で追加接種のことを調べた。そこには咬まれた日から数えてとちゃんと書いてあった。僕はホッと胸を撫で下ろし、気分が晴れた。今日ほどスペイン語ができてよかったと思えた日はない。明日は満月。今の所、近所の犬が急に僕を恐れるようにはなっていない。猟奇殺人も起きていないし。マントを着て背中に銀の鏃がついた弓を背負っている不気味な男も見かけていない。咬まれたのが犬だったから狼になることもないのだけれど、月に向かってあお〜〜んと吠えてみたかった気がしないでもない。振り向きざまに鏡を見ても目が金色になってもくれないのでちょっとがっかり。でも、これから宿に来るお客さん、念のため銀の弾をお持ちになってお越しください。あーははははははは・・うへへへへへへへ、ガルルル。

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