スペイン語の話

朝起きて外にでる。いつもよりひんやりした空気が巻きついてブルとなる。今朝はどんよりした雲が垂れていてスッキリしない。門の鍵を開けていると下に住んでいるガルシアがやってきて「犬に噛まれた傷はどうだ。あの犬は繋いでおいて方がいいのに。病院へは行ったか」と聞いてくる。「病院へ行って注射を打っている」と答えると「あぁ神様」と言ってから「ガビとは連絡を取っているのか。子供達は元気なのか」「彼らは元気だ」「あの家族と連絡が私はできないから困っていた、すると息子がヒデキに聞けばいいと言うので聞きにきたのだ。これはいい考えだと思う」犬の話はすっかりなくなりひとしきりガビちゃん一家のことを聞いて納得したのかアディオスと言って去って行った。

ここ2〜3日、スペイン語がうまく話せない。スランプらしきものがそっと背中に張り付いて会話の邪魔をしている。簡単な単語が出てこない、話している途中で言えるはずの言葉が詰まる。もどかしくて仕方がないが、こうしたことの後には少しうまくなるので気にすることはなくなった。たいていの場合新しい言い方や、新たに覚えなければいけない単語が出てくると頭の中の引き出しが閉まらなくなってとっちらかってしまう感じ。今回は何か新しい単語を覚えたのかしらと思い返してみると、どうやら泊まっているお客さんにスペイン語を2時間ほど教えてあげたことがいけなかったらしいと思い当たる。
普段はまったく考えずに使っている言葉をどんな時に使うのか、どう使うのか、この言い方とあの言い方はどう違うのか、使い分けているのかと矢継ぎ早に質問されたのでいちいち日本語で考えなくてはいけなくなって、そうなると一旦、英語に置き換えて、それを日本語で説明するから引き出しが閉まらなくなってしまったのだ。
日本語でだって「あ、そう」「それで」「そうだよ」「でしょ」といった言葉を説明するのは難しいのだ。

新しい文法はもはやないけれど、苦手な言い回しや、あまり使わない言い方は自分のものになるまで時間がかかる。こうなるともはや学校ではなくてひたすら日常で使い込むしか道はない。それに言いたいことが言えるようになってくると必要な単語が増えて来てこれまた覚えるまでに時間がかかる。不思議と1発で覚えてしまう単語もあれば、何回使っても覚えられない単語もある。「あ〜あれなんだっけ、もう少し、そこにあるのに」とじれったくて仕方ないが、次の瞬間にポンと現れる単語もあれば、霧のかなたに消え去ってしまう薄情者もいて、思うに任せない。決まってそれは必要な時にやって来て、僕を困らせるのである。

スペイン語学校に通う旅人もまた苦労している。2週間あれば旅に必要な会話はできるようになるのだけれど、それが何かがわからないで通っている人が多いので上達を感じられないようだ。僕は英語ができる人には自分が普段つかっている動詞を先生に渡して仕舞えば余計な勉強をしなくて済むと言っているのだけれど、未だ嘗てそれをした生徒さんはいない。すでに英語を話せる人は3000語から6000語ほどの単語を知っているのだ。でも実際つかっている単語はおそらく1500語もないであろう。スペイン語圏の若者は日常80ほどの単語しかつかっていないという記事を読んだことがある。となれば日本人であれば早い人なら1日で覚えてしまえる数だ。

旅で使う単語の代表は
have want need can how whatの6個があれば事足りる。
これに必要な名詞をくっつけてしまえばとりあえずは事足りるのだ。
切符、部屋、肉、魚、野菜、お湯、観光会社、バス、飛行機、電車、タクシーを英語で言えない人はいないだろう。これに、いくら、どのくらい、どこ、なにの疑問詞、行く、泊まる、食べる、飲む、見るの動詞があれば事足りてしまう。

実はほとんどの人は、旅先で知り合った人と会話を楽しみたいと思っていて、話せるようになりたいのだと思う。そんな時、自分が使う質問、言い回し、話題について考えればそんなに必要な言葉は多くない。問題は相手が話していることが聞き取れないということに気がついていない人が少なくないこと。道を聞くことができても、その答えを聞き取れないから困っているのではないのか、質問に対する答えが予想外に長くて、しかも余計なことまで言われるのでちんぷんかんぷんになってしまうのではないだろうか、言っていることはなんとなくわかるけど、勘違いも多くて、あとでなんだとなる経験があるのだと思う。

これの解決法はただ一つ、聞いて聞いて聞きまくり、わからない単語を見つけること。それさえわかってしまえばあっさりと解決するのだ。これは文法をいくらやっても遠回り。店に行き物の名前を聞きまくり、レストランで注文し、街中で道を聞くしかない。「今なんて言ったの」「その意味はなに」「ここに書いて」「もう一度言って」と言えればすんなり解決。次回は理解できるようになっている。最初の1週間でこれを覚えて、あとは町に出て話しまくっているうちに、一つ一つ単語が増えて耳から入った単語が口からで始めればもう話せているのだということに気がついてもらいたい。 僕がつかっている質問はほとんど「Que」の一言。これに「デ」「パラ」「ア」「ポル」「コン」をつけて聞いてしまう。文法もへったくれもない。「そうなんだ」「本当に?」「そうだよ」と言った合いの手を打つような言葉を使っておしまい。「私はそれの意味がわかりません。もう一度言ってくださいますか?」などと日本語ですら聞かない。「えっ?なに?もう一度お願い」と言っている。ここに主語もなければ敬語もない。さらに言えば、ここでは僕らは外国人だから多少下手くそでも相手は理解してくれる。「わからない、もう一度言え」と言ったって相手は気を悪くするはずもないのだ。

とは言え、初めての言語を学ぶ気持ちもよくわかる。語学学校に行って基礎を学ぶことはいいとっかりとなる。学校で体系的に多くのインフォメーションを受け取ることはとてもいいこと。覚えなくても大丈夫。繰り返し繰り返し同じ言葉を聞くことになるので自然に耳に残って理解できるようになる。ヨーダも言っていた。Don’t think… feel…
考えるな感じるのだ。ブルースリーも言っていた有名な言葉。またAnger… fear…shy. The dark side of the language are they.
怒り、恐れ、恥ずかさこそが言語の暗黒面だ。くれぐれもダークサイドに落ちることなかれ。

これから留学する旅人が増え始めるサンペドロ。いい先生を捕まえたいなら少し早めに来られた方がよろし。人気の先生から埋まって行くのは世の常。短期であれば尚更のこと。そして大切なお金の話。もし費用対効果を高めたいのであれば数千円をケチることなかれ。これから先の旅で使う言語であれば尚更。2週間でその差は歴然と出ていますよ。

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