その名はおしっこちゃん

ある日
買い物を終えて宿への帰り道。道の端にコソコソと逃げていく鳥を見つける。よく見ると子すずめで、まだ飛ぶことができないらしい。上を見上げてどこから落ちてきたのかしらと雨どいの隙間を見るが何もない。家で暇にしているカフェの慰み者にでもしてやろうとひっ捕まえて持ち帰る。

宿に帰るとルミさんがいて。子すずめを見た途端に目を潤ませている。カフェにほらよとスズメを投げる。カフェは嬉々として子すずめを咥えたけれど、それを見ていたルミさんは見たこともない素早さでカフェを押さえつけスズメを吐き出させた。カフェも僕も驚いてなに事が起きたのかと固まってしまった。ルミさんは子すずめを心配そうに両の手において致命傷がないか見ている。そして僕らのことなどまるで眼中にないかのように子すずめを部屋へと連れて行ってしまった。

すぐに出てきて、きな粉をよこせと言う。きな粉はとっても貴重なもので鳥ごときにあげるわけにはいかないものだけど、ルミさんの迫力に負けてうやうやしく差し出してしまった。つききりで子すずめの面倒を見始めるルミさん。その献身的な姿に僕とカフェは子すずめを諦めざるを得ないと悟る。

果たして、数日後子すずめは元気になり、よくエサを食べるようになった。いつの間にか名前までつけられていてピピちゃんと呼んでいる。僕はこれまた面倒なことになったと密かに思ったけれど、諦めてきな粉を用意し、生餌が欲しいと言われればウジ虫をゴミ箱から集めてはルミさんに渡した。子すずめは大抵巣から落ちると死んでしまうのだけれどピピちゃんはいつまでたっても死なない。それどころか日毎にやんちゃぶりを発揮しだし、僕の肩につかまって一緒に買い物に行くようになった。村の人間は皆一様に驚き、どうしたのだと聞かれる。説明しているうちにまた新しい文法を使えるようになった。

「かわいい、飛んでいかないのか」
「まだ飛ばない」
「どこで会ったのだ」
「道を歩いているときに見つけた」
「名前はあるのか」
「ピピだ」

と答える。すると皆が揃って苦笑するのは子すずめの名前。一緒にいるルミさんはなぜ彼らが笑うのかわからずキョトンとしているが僕はあえて知らないふりをしていた。あとからルミさんが聞くのでそれはピピという名前にある。ピピはスペイン語でおしっこのことだ、つまりこの子すずめの名前はおしっこちゃんと言っているのだと教えるとびっくりした顔をして慌てていた。

ともあれkamomosiに波乱を呼んだ子すずめの名はおしっこちゃん。彼だか彼女だか依然不明のこの子すずめは自分にそんな名前がつけられているとはつゆ知らず、村の人気者になっている。日々の成長を見ていると微笑ましくなってついついkamomosiのメンバーにしてしまった。ただし飛び立つまでの期間限定。1日も早く一人前になって巣立ってほしいものだと思う。

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その名はおしっこちゃん」への3件のフィードバック

  1. こっけ~

    こんにちは!
    3ヶ月ほど前に、1泊だけ宿泊したものです。
    かなり時間が空きましたが、カモモシさんをはじめサンペドロララグーナのことを記事にしてみましたー
    http://www.morotabi.com/?eid=630
    とってもとっても素敵な宿だったので、またぜひお伺いしたいです!

    返信
    1. HIDEKI 投稿作成者

      こっけ〜さま
      ご宿泊いただきましてありがとうございました。
      また、当宿のことを記事にしていただき感謝しております。ただ、当宿の食事はSNS等記載を控えていただくようにお願いしているんです。でも載せちゃったものは仕方なし、問題ありませんのでご安心を。身に余る記事に恐縮しています。当宿このようなお言葉をいただけるほどたいした宿ではございません。中程度の引きこもり、コミュ障をこじらせたおっさんがなんとか切り盛りしていおります。日本人だけでなく全世界の人々を隔たりなく迎え入れたいと思っています。いつの間にやら日本人宿として名を知られましたが、グアテマラ人も他の国の人も全然大丈夫です。
      ぬいぐるみの記事は特徴があって面白いですね。僕も覆面でもかぶって写真をブログ掲載してみようかしらと思ってしまいました笑
      またいつでもお越し下さいませ。

      返信

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