幸代とセシリアの話

幸代メヒコへ

「幸代と一緒に行ってくればいいじゃないですか」
それを聞いたメイさんの目がいきなり変わったのを僕は見逃さなかった。ちょっとしまったとも思ったけれど、時すでに遅し。ルミさんが怪訝そうな顔をしていてもメイさんはおかまいなしに僕に質問してくる。僕は大丈夫でしょ、ダメだったらポイっと捨ててしまって構いませんからと軽く言うと今度はルミさんが「幸代を捨てるくらいなら戻ります」とちょっと怒っている。

 

ビサクリにメキシコに行く二人は幸代を連れて行くことに決めてしまった。二人はどう幸代を運ぶかを検討し、僕の破れたスタッフバックを修理し、移動手段、ホテルなど二人で楽しげに検討している。問題は国境だと話し合っている。一人ずつイミグレに行けばいい、いやバックに入れておけば幸代はおとなしいから大丈夫だとあれやこれやと言っている。メキシコに入ってからのコレクティーボも問題。僕は車の屋根に荷物として乗せてしまえばいいというが二人は絶対に車内だと反対する。僕はゲロを吐くから気をつけてと言うしかなかった。

 

当日、幸代を連れて楽しげに出かけて言った。午後、メイさんかウエウエテナンゴに着いたと連絡があった。いつもの綺麗な宿は断られてしまいボロ宿に泊まる二人。あんなにボロ宿はやだと言っていたルミさん、幸代のためならそれも厭わないとは。

翌日は国境越え、グアテマラの野良犬がまさかの海外旅行。なぜあの二人がそこまで幸代をかわいがるのかまったく理解できない。今日は連絡がないのできっと幸代が脱走して困っているのではないかとちょっと心配になる。

 

セシリア

とても忙しくなったのでお手伝いが必要となった。そんなところへやってきたのはスセリー。彼女はサンペドロに来た頃からの小さな友人。ちょっと背伸びして大人になりたい年頃の娘。彼女が姉さんが仕事を探している。とても優秀だから雇ってくれと言う。ともかく1度会うことになった。彼女の姉妹なら身元もはっきりしているし、父親のことも知っているので安心だろうとセシリアに会ってその場で月曜日から来てもらうことにした。

 

セシリアはとても真面目で、これがグアテマラ人かと思うほどしっかりと働く。よく気がつく。一度教えたことはすぐに覚えてしまう。僕はすっかりセシリアが気に入った。彼女はサボることをしない。仕事は来てすぐに始める。終わるとサッと帰るのでとてもメリハリがあっていい。

 

彼女の仕事は主に掃除。僕が気がつかないところまでよく行き届いた掃除をする。たまに窓を拭き忘れるけれど、すぐに思い出しケラケラと笑いながらふき取っている。彼女は先月500ケルアル以上を稼ぎとても嬉しいと言う。しかもガイドのお仕事も臨時で入り尚更に嬉しそうだ。でもそれは彼女の学費に当てるので彼女が遊びに使えるお金は少ししか残らない。彼女は学生で先生になりたいと言う。彼女ならきっといい先生になれるだろう。

 

仕事が終わると僕は彼女に朝食を作る。作り方を見せ、味を教え、包丁の使い方を練習させている。最近は彼女が作ることもあってメキメキと腕をあげている。お客さんがよく行くカフェに連れて行きコーヒーを飲み、オススメの料理を食べる。普段彼女が行かないツーリスト通りにある店に連れていくのはお客さんの案内のため。

 

セシリアはガイドもできる。お客さんが一人では心配というのでそれではセシリアを一緒に連れて行けばいいと言ったことから始まった。彼女と行けば安心だし、よくわかっているのでボラれることも少ない。スペイン語の練習にもなるし、何より地元の子と一緒に遊べるとてもいい機会になる。
価格は250ケツアル。これはとても高い金額でそこいらのガイドよりはるかに高い。英語ができない彼女ならもっと少ない金額が妥当だと思われるけれど、僕は全然そうは思わない。なぜなら彼女と一緒なら適正価格で買い物が出来、短時間しか遊ぶことができないツアーより長く買い物を楽しむことができるから。それに適正価格がわからずにボラれて店の人にお金が行くくらいなら彼女に払ってもらいたいと思うから。なおかつ地元の交通機関を使うので旅の雰囲気を安全に楽しむことができる。そこまでしてくれるガイドになぜか日本人はチップを払ってくれない。そこでチップ込みの価格として250ケツアル。一人でも複数人でも同じ。
彼女は僕の良き先生でもあって、まったく不満を感じない。なにより。

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