薄井幸代のその後

ヤラカシ犬の薄井幸代はその後も問題を度々起こし、一度は山に捨てて来たのだけれど、帰巣本能が付いていたのか戻ってきました。紆余曲折の末、うちで飼い続けることに。すっかり有名になった薄井幸代は宿にくるお客さんにも知られるようになり出しています。問題ばかり起こすバカ犬のその後が気になると言われてしまいちょっと今日はある1日を書いて見ました。

 

幸代ヒヨコ殺害、誰も幸せにならないけど
先日、ヒヨコを買った。卵を産ませて食べてみようと思ったのと、大きくなったら食べてしまおうとも思ったから。1匹13ケツアレス。安いのか高いのかわからないけれど手のひらにすっぽり入ってしまうほどのヒヨコはピヨピヨと鳴き続けている。店員から夜間は暖かくしてあげないと寒くて死んでしまうから注意しなさと言われ、そんなものなのかと思い、ダンボールに使わなくなったクッションのワタを入れて即席の巣を作る。

お客さんも可愛いと大喜びで、途端に宿の人気者となり、いつの間にやらぴーちゃんと呼ばれるようになっている。僕はあらら名前なんかつけてしまっては後で後悔しますよとほくそ笑む。だって、いつかの夕食に出してあげようと思っているのだから。その席で「あれ?ぴーちゃんは」と聞かれたら「今お召し上がりになっているじゃありませんか」と答えてあげようと決めていて、その時の反応を是非ともみたいのだ。
ピーちゃんは僕の後をしきりに追いかけてきて足の間に入ってくる。両の足を気をつけの姿勢のようにつけるとその間にすっぽりと入り込み動かなくなった。きっと温かいのであろう。ちょっと目を離すと踏んづけてしまいそうになるので途端に動きづらくなってしまった。

カフェはピーちゃんが気に入ったようで、クーンと優しげな声をかけている。心配でいてもたってもいられない様子がとても可愛らしい。ピーちゃんが庭から落ちた時は慌てふためいて懸命に助けようとしている。たまに見失うとそこらじゅうを探し回り、見つけると少し離れた場所に座って見守っている。
一方、幸代は新しく現れた新参者がお客さんの人気を独り占めしていることに嫉妬していて、鼻先で小突き回わしている。軽く噛んだりしてちょっかいを出さずにはいられないようだ。幸代にかじられたピーちゃんは体が硬直して動けなくなっている。アンリはピーちゃんが死んだのではないかと心配しているので僕はピーちゃんを掴んで「はいリセット」と言って立たせると何事もなかったかのようにピヨピヨと鳴き出した。

しばらくしてモモコが「ピーちゃんの声がしない」と言う。あたりを探すが見当たらない。さては猫にさらわれたかと思ったけれど、念のために庭を探すとそこには変わり果てたピーちゃんが横たわっていた。ベロベロに舐められ羽が泥だらけになっていて肌が露わになっている。隙間から小さな咬み傷が見える。僕は幸代がやったのだとすぐにわかった。僕らが目を離した隙に、ピーちゃんをさらって人に見られないようにいたぶって殺したのだ。ピーちゃんを庭に埋めるとカフェがとても可哀想な声を出して悲しんでいる。
幸代は僕らが大騒ぎをしているのに寝たふりをしていて憎たらしい。よほど人気の座を奪われたのが悔しかったのだろう。果たして僕の目論見は見事に外れ、ヒヨコを再購入することはしばらくの間やめることにした。その可愛さに沸き立っていたお客さんたち。幸代がやったことになんとも言えない複雑な気持ちになっている。幸代は普段から僕に叱られてばかりいるので大抵のお客さんは幸代をかばい、気の毒に思っている節がある。僕は幸代のずるさをたまに垣間見ているので奴ならやるであろうと思うのだけれど、お客さんたちにとってはかなり微妙に感じている様子。

新しくkamomosiの一員としてやって来たピーちゃんは果たして1日も持たずして短い生涯を閉じてしまった。結果、お客さんは釈然としない思いだけが残り、幸代は叱られ、カフェは悲しみ、僕の目論見は外れてしまうという誰もがちっとも幸せになれない結果となった。

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