日々雑思 メキシコへの旅2

心の声は聞こえるか

サンクリにはこれで5度目か。勝手知ったるこの町でも知らないことは多いけど、大概の場所は知っている。一緒に来てくれたアンリとモモコを連れて街を案内する。二人とも年頃の女の子、見る物すべてが可愛くて、すべてが食べたくて、とにかく何かを触りたい。買いたいのではなく、一緒に観て回るその行為が楽しくて仕方がない。
わかってはいるのです、その気持ち。こちらは言ってみれば観光ガイドのようなもの、二人の歩みに気を使い、会話を邪魔しない程度に説明をする。様子を伺い、適時休憩がはさめるような案内をしなければ、途端、非難轟々となり八つ当たりの嵐に巻き込まれるのは明白です。でも時々心の声が漏れ出てしまうのです。決して言葉にするような愚行はいたしません。だたそっと「ちっ」と聞こえないように、気がつかれないようにそっと漏らすのです。店の外で、会話に夢中になっている二人に背を向けて。
二人とは大の仲良し。そこで二人に「僕の心の声を聞いてみたいかい」とたずねます。二人は声を揃えて「もう、私たちわかってますからいいです」と笑顔で答えてくれましたが、目はけっして笑っていないのです。僕には観光ガイドは勤まらないなぁと思いつつ「それじゃ、美味しいタコス屋さんに行こう」と何事もなかったように話をそらしました。二人も何事もなかったかのようになんのタコスを食べようかしらと言いながら先に歩き出しました。

 
宿を見る目
僕の宿を見る目が明らかに変わっていて、以前には気にもしなかったところに目がいくようになっている。外観の色使い、看板の文字のフォント、フロントの料金案内の書き方から始まり、壁に飾ってある絵や部屋の小物など。もちろん掃除をどこまでしているかとかとにかく細かくなって微に入り細に入り気になるのです。別に汚れていても気にはならないけれど、ちょっとした工夫や気遣いに「ほ〜」「ふ〜ん」といちいち感心しては自分の宿に取り入れられるものはないか、反省すべき点はないかと思うのです。宿の人の応対の仕方、所作、着ているものなどすべてが気になり出して仕方ありません。あちらの宿こちらの宿をちょこっと覗き見てはその宿のちょっとしたエッセンスをいただいてしまおうと企んでいるのです。
そうはいっても一人でやるには限界があって、果たして自分の宿はどうかというと現状維持が精一杯。毎日の掃除は欠かさないけれど、無情に吹く風が運んでくるあれやこれ、容赦なくやってくる虫、伸びる草木には到底かなわないのです。一流どころのホテルの料金が高いのはこうしたことに人と時間の多くを割いているのだとつくづく思うのです。

 

荷物を盗まれることは旅する心を折られること

このところのメキシコはやや物騒であっていつ被害にあっても不思議ではない。先日に泊まった宿のお客さんはタクシーに荷物を置いたまま用を足しに外へ出た途端にタクシーに走り去られてしまい、すべてを失ってしまった。日本に連絡してお金を送金してもらったが、すっかり旅行する気分を失ってしまい帰国する飛行機のチケットを買っていた。

旅先でものを取られるとガッカリするだけでなく、旅する心まで盗まれてしまったように感じてしまう。吟味に吟味を重ね、カバンに詰めたりやっぱりいらないと取り出したりと、旅先で起こる様々なことに思いを巡らせて選び抜いた旅のお供は自分の一部であって、それ自体が旅を演出する大切な道具だから。それがちょっとした隙になくなってしまった時の喪失感といったらちょっと言葉では言えないくらい。

久しぶりの移動の最中、僕は何度か「あっ」と思った。ついつい油断して大切なものが入ったサブバックを視界の外に置いてしまったり、歩いている途中、不用意にカバンを開けて中身をぶちまけたりと自分の不甲斐なさにありゃありゃとなってしまった。運よく何事もなかったけれどこうしたことに気がつかなくなった時にやられてしまうんだなと反省させられた。

以前、バイクの後ろにかけて荷物を抑えるネットに挟んでいたサンダルを片方落としてしまった時も悲しくなってしまった。クロックスのサンダルは底が厚くて砂利を踏んでも平気だったけれど、現地で買ったサンダルは小石を踏んでも痛っとなって無くしたことをその度に後悔する羽目になった。

荷物を失うことは自分のスタイルを失うことも同然で、ひいては旅する心が折れてしまうのも頷ける。予期せぬトラブルの大半は自分の注意力次第で防ぐことができるのだからくれぐれも怠りの無いようにしたいものだ。

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