脱糞娘


一度は飼うことを諦めた薄井幸代。ところが翌日もよく翌日もうちにくるのです。野口さん(仮称)も飼いたいようです。僕は飼い主に譲ってもらうことを真剣に考えました。

野口さん(仮称)が夕方、買い物に薄井幸代を連れて出かけました。帰り道で飼い主にばったり会い、これは私の犬だと言われたとすっ飛んで帰って来ました。そして飼い主は欲しいなら売ってもいいと言っているといいます。

僕の心は決まりました。薄井幸代を買い取ろう。

早速、飼い主と値段交渉をします。ふっかけられましたがそれでも想定の範囲です。僕はその場で薄井幸代を買い取りました。晴れてうちの犬となった薄井幸代。新しいCasa de kamomosiのメンバーとなりました。カフェと並んでお客様をもてなすコンパニオンです。

奇しくも今日はクリスマスイブ。神様が薄井幸代に微笑んだのでしょうか。風呂に入り、ご飯を食べた彼女。これまでの貧乏癖が抜けないのは仕方ありません。ご飯をたらふく、あるだけ食べてしまうのです。お腹いっぱいになった彼女をクリスマスパーティーの席に招きました。これから食べようとお客様が一同になり席につこうとした刹那。あろうことか薄井幸代はテーブルの下でウンチをし出したのです。仕方ないこととはいえこれはいけません。僕は薄井幸代の横っ面をはたきあげ今しがたした彼女のウンチに彼女の鼻を押し付けて思いっきり叱りました。これからこうした粗相をしないように粘り強く教えていかなければいけないからです。

彼女は悲鳴をあげていましたが、お構いなく思いっきり叱ります。シュンとなった薄井幸代。相当堪えたようです。野口さん(仮称)が慰めています。僕はウンチを片付けながら、うんと優しく慰めてやってくれと野口さん(仮称)に言いました。まだ子犬の薄井幸代には優しさも必要なのです。

そして夜、僕の部屋で寝かせます。2時頃ヒンヒンと鳴くので帰りたくなったかと思いましたが実は違いました。ベットから飛び出すと、ブリブリブリと豪快な音とともに脱糞してしまいました。きっと薄井幸代は僕にウンチが出ちゃうと教えたのに、僕がわかってあげられませんでした。今回は僕は叱りません。ウンチを片付けて薄井幸代を外につなぎました。子犬なのでウンチの回数が多いのかもしれません。朝、薄井幸代のヒンヒンという声で目が覚めます。

僕はカフェと一緒に薄井幸代を散歩に連れて行きます。すぐにウンチをする薄井幸代。僕はうんと褒めてあげました。今日の散歩コースは山コース。2匹は嬉しそうに跳ねまわりながら自由に山を駆け巡ります。仲良く散歩する2匹に油断した僕の隙をついてカフェが大暴走。山に駆け込み戻ってきません。カフェを呼び戻そうと追いかけますが逃げ回るカフェ。薄井幸代がその隙に逃走です。追いかけても逃げ回り山の中腹から実家に帰ってしまいました。

僕は薄井幸代の行方を確かめてから家に戻りました。もし僕が薄井幸代の立場なら、嫁いだ初日に主人の目の前で脱糞してしまうという、前代未聞の恥ずかしいことをしでかしてしまったのです。もう死んでしまいたいと思うでしょう。少しの間、実家に戻って心の傷を癒せばいいと僕は彼女を実家に返したのです。

ところが。午後、実家に迎えに行くと、ここにはいないといいます。様子がすっとぼけた感じです。帰ってきた薄井幸代を見て手放したくなくなったのでしょう。ここで騒いでも埒が開かないと見た僕は、あっけなく「あっそう、じゃぁいいよ」と言って帰りました。
しばらくすると薄井幸代が帰ってきました。慌てたように飼い主がきて言い訳を言っています。ちょっとがっかりする気持ちがむっくりと起き上がります。近所付き合いと言っても結局、金がらみでしか考えない彼ら。金を借りる時と施しを受けるときはエヘラエヘラするくせに、物を売りつけるときは高飛車に出る彼ら。わかっていてもイラつく気持ちが出てしまいます。

ともあれ、薄井幸代はうちの新しい家族となりました。これまで野良犬同然の生活をしてきた薄井幸代。やっていいこと悪いことを覚えるにはちょっと大きくなっています。僕は彼女が日本人宿できちんとやっていけるようにあえて最初は畜生として扱うことにしました。宿の中で粗相をしない、無駄吠え、人に吠える、飛びついたり、もちろん噛みつくなどもってのほかです。落ちているものを拾い食いしない、カフェのごはんに口をつけない、散歩中も、買い物中もきちんと言うことを聞くことができるように1日中厳しく接しています。

薄井幸代は思ったより賢く、物覚えもいいようです。きっとひと月もすれば怒られることも激減でしょう。今はまだ1日数回は横っ面をぶっ飛ばされている薄井幸代ですが、変化は目に見えるほど良くなっています。頑張れ薄井幸代!ようこそ薄井幸代!脱糞娘薄井幸代に幸せあれ!

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