財布をなくす

ボート桟橋に降りた僕はハッとした。財布を無くした?どこを探してもない。どこで?いつ?と頭を駆け巡るけれど、ボート代の支払いもできない。ボートの船長は呆れてもういいよと行ってしまった。
カフェは桟橋を行ったり来たりウロウロしている。お前がパナハッチェルの桟橋で大暴走するからだとカフェのせいにしてしまう。

これまで財布など無くしたことがなかったのに、きっと旅という緊張の日常から解放されて油断したのだ。パナハッチェルには日本食材を豊富に仕入れられる店があってせっかくだから買って帰ろうと思ったのでいつもは使わない財布を持って行ってしまった。カードが3枚入っていてその全てを無くしてしまった。

無くしたことに気分が落ち込んだのではなく、自分の浅はかさに落ち込んでしまう。それでもなんとかなると考えられるのはきっと自分の成長の証なのかもしれない。これからはうんと気をつけなくてはならない。

カフェの大暴走は時たまやってくる。こちらが呼ぼうが宥めようが一向に戻って来なくなってしまい埒があかない。どうしてそうなってしまうのかわからないのだけれど、きっと彼なりのストレス解消なのだろう。

今朝はお客さんが起きて来ないので、カフェとふたりきり。椅子に座ってパソコンを打っていると、カフェがやってきて前脚を揃えて僕の足の甲にのせ、その上に自分のアゴをのせ、後脚をすっかり伸ばして、鞣し革のようになって目を瞑る。そうして深いため息のように息を吐きながらぐっすりと眠り込む。

そういえば僕はカフェをいつも叱っていたがカフェは僕を叱ったり意地悪したりしなかった。朝起きて僕に会うと何年も会わなかった人のように懐かしがって迎えた。昼寝から目覚めたときだってそうだった。いやだねえ。

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