カフェ失踪

飼い犬のカフェは少し軽薄なところがあってこのところ、僕に怒られてばかり。きっと彼は新しく面倒を見てくれる新しい主人に安心したのだ。
湖に散歩に出かけたとき、カフェはヨシの中に入っていった水鳥を追いかけて全く戻ってこなくなってしまった。1時間ほども待ったけれども彼はこちらの姿を見ると再びヨシの中へと消えていく、そのうち姿を見せなくなった。僕には宿で出発を待つお客さんがいたのでやむなく引き返した。後になって探しにいくが見つからない。きっと誰かに拐われてしまったのだと心配しているとひょっこりと帰ってきた僕は安心してうんと叱るとかなりしょんぼりしてしまい、意気消沈している。ドロドロに汚れた体であるためさらに情けなくなってしまう。お風呂にいれてからその夜は一緒に寝てあげることにする。

翌日、買い物へ出かける時に一緒に付いてくるカフェ。道でゴミを咥えているのでノーと強く言うとその場にヨレヨレとへたり込んでしまった。きっと怒られて体の力が抜けてしまったのだ。こちらが腰をおろしておいでと言うとパッと顔が明るくなって。あとを付いてくる。かわいい。
スーパーにいくとカフェは店の中には入れない。彼は僕に付いてきたのだけれどここに座っていろと言われ渋々待つが、我慢ができなくなったり、寂しくなるとついつい店の中に入ってきてしまう。僕が再び入り口まで行き待たせる。つまらなそうな、不安そうな顔をしているカフェを見て、店員も笑っている。何度も何度も失敗をしながら最近は随分と覚えてきた。

夜、カフェは番犬の仕事。怪しげな音、何かの気配に敏感に反応して飛び出していく。体に似合わない太い声が暗闇の中にこだまする。しばらくするとトトトトと帰ってきて僕に異常なしを報告し終えると寝床へ行き、ドスンと寝てしまう。ある時は庭の階段の上に立って、少し頭を下げて様子を伺うように暗闇の中を見ている。僕には何も見えないけれど彼はきっとよくわかっているのだ。犬の目は白黒にしか見えなくて近眼だというけれど一体何が見えているのだろう。

新しいルールに戸惑いながらも僕を慕うカフェ。どこにいくにもぴったりと寄り添い、けなげだ。たまの大暴走もあるけれどきっと大切にしてやろうと決めている。

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