土日通信 

なんでヒデキは黙って行ったの!

ロサリサが大激怒です。といっても彼女の早とちり。先日、僕が行商に出かけた時に大きなカバンを持って出て行くのを見た彼女が僕がてっきりメキシコに帰ってしまったのだと思い込んだようです。彼女はホアニータにところに行きホアニータに食ってかかったのだそうです。僕は帰った来てからホアニータにことの顛末を聞きました。ロサリサがそんな風に思っていてくれたことが僕はとても嬉しかったのです。このホテルに来たのは今年の1月。色々なことがありました。彼らと打ち解けたのはアメリカ人が大騒ぎをして警察沙汰になったことがきっかけだったと思います。その後パーティー料理を作ってあげたり、僕が病気になって病院へ連れて行ってくれたり。このホテルの家族とはとてもいい関係にあるのです。

今では時々僕の部屋に遊びに来てくれたり、僕がレセプションに行って話し込んだりとなくてはならない存在になりました。彼らにスペイン語を助けてもらいながら今日までやってきたました。はじめ僕は彼らが「ヒデキは家族と一緒だから」と言ってくれても、日本人感覚でいうとそれは方便程度にしか聞こえませんでした。でもこのところ毎日のようにヒデキが行ってしまうと寂しい。帰ってきたらいつでも来てくれていい。私たちもあなたのところへ行く。といつも言うのです。マヌエルも「ここで働いてくれ。このホテルをヒデキに任せたい」といいだす始末。ホアニータはこのホテルのことやサービスのことでいつも僕に意見を求めてきます。僕はお金がかかるのだから少しずつやればいいんだと言ってあげることにしています。雨が降ると屋上に溜まった水が流れ込んできてホアニータが雨に濡れながら懸命に水が階下に行くのを防いでいる時は一緒に手伝って二人してびしょ濡れです。息子のアンダーソンと一緒に廊下を拭いている時、彼女は「ごめんなさい」と言うのです。僕は「全然問題ないよ。これは一種のアクティビティーみたいなもんじゃない」 と言うと彼女ホッとしたような顔をしています。

そしてロサリサの大激怒事件。僕はこんな風に外人である僕を受け入れてくれていることにとっても感謝しているのです。彼女がこんなに怒るなんて僕も正直驚きました。
僕が宿を始めるのを知って、ホアニータは色々と教えてくれます。「人を雇うなら私に相談しなさい。私は誰が働き者かわかるから決める前に私も一緒にあってあげる」と言ってくれます。「あそこの近所の人はツトゥヒル語しか話せない人もいるからあなたも覚えなきゃだめよ」「たまに広報が回ってくるけどそれもツトゥヒル語だからわからなかったら電話しなさい」「洗濯機が必要ならイイお店があるからマヌエルと一緒に買いに行きなさい」と何かにつけて教えてくれるのです。ロサリサは「掃除が必要なら私が行ってあげる」「ツトゥヒル語も教えてあげる」と言ってくれます。色々と不安を抱えることが伝わってしまうのか「なんにも心配いらないわ、少しずつ良くなっていくのだから大丈夫」とも言ってくれるのです。スペイン語に関しては厳しい二人。「前よりは良くなったけどまだまだね、もっと話さなければだめよ」とピシャリと言われてしまいます。

帰ったらこの家族を一度招待しなければなりません。彼らの好きなチャーハンを作ってあげなくちゃ。

フライドチキンの骨と犬

たまに食べるフライドチキン。決まって同じ店に行きます。ここの店員さんたちはめっぽう優しくてちょっとサービスをしてくれるのです。ポテトをつけてくれたり。揚げたてを奥から持ってきてくれたりと小さな優しさに溢れています。いつも話しかけてくれるので僕のお気に入りでもあります。ここで食べていると野良犬たちがやってきて物欲しそうに僕のそばでしゃがみこんでいます。以前、メス犬とオス犬の2匹が僕の肉をもらいに来た時、メス犬は意地汚くてオスに投げた肉を片端から横取りして食べてしまいます。オスがもう少しで口に入れそうな時でも歯をむき出して威嚇するのです。それ以来僕はメス犬に骨をあげるのをやめました。メスが来てもシッと追い払い、オスが食べることができるようにしてあげます。メスは不満そうに下がりますが人間には絶対に逆らわないのがこのあたりの犬の賢いところ。逆らえばひどい目にあわされることを知っているのです。最近では学習したのかメス犬たちがあまり寄ってこなくなりました。来ても店の外でこちらを物欲しそうに眺めているだけです。どうやら賢さはあるようです。

日本では鳥の骨は縦割れして刺さってしまうからあげてはいけないと言われますが、こちらではお構いなしです。たまに血を出しているのがいるのでどこかに刺さってしまっているのかもしれません。生の骨でも同じこと。彼らはガツガツとあっという間に平らげてしまいます。市場で出る豚の骨は大きいのですが1匹がそれを咥えてどこかへ逃げていきます。何匹かの犬がそれを追います。このときも犬たちの力関係が如実に出ます。弱いものが咥えているときはあっという間に取り上げられてしまうのです。ギャンギャンと悲鳴が聞こえるかガウガウと喧嘩になるかのどちらか。彼らもまた生きるのに必至です。身体中傷だらけの犬ばかり、とっても大きなやけどらしき怪我の跡がある犬はきっと人間に熱湯でもぶっかけられたのでしょう。路上で喧嘩している犬は、たちまちおじさんにやっつけられてしまいます。容赦なく棒で殴りつけられ悲鳴をあげてスゴスゴと退散する姿を見ていると、なるほど犬も逆らわないわけです。人と畜生の境界がしっかりとしているのはいいことです。日本であんなことをしたら人間性を疑われそうですがこれはこれでありだなと思ってしまうのです。

余談ですがこちらの犬はアボガドが大好きです。道に落ちている殻に口を突っ込んで食べいます。確かに醤油をかければマグロに似ていると言われてはいますが所詮は野菜だか果物みたいなものなのにあんなに夢中になって食べるところを見るときっと美味しいのだと思うのです。ところ変われば犬の食性も変わるのだと感心してしまいます。

夜の王者酔っ払い

昼間から目がすわり、路地に座り込みうなだれたり、文句を言ったり。ここの男どもは酒にだらしないのです。日本でも昔こんな光景がありました。僕はふと「酒は飲んでも飲まれるな」「酒と女は2合まで」などと言ういいかたがスペイン語にもあるのか気になりました。そのうち調べないといけません。夕方から彼らはムックリと起き上がり坂の途中の安酒屋に行くのです。一体何を飲ませているのかわかりませんが夜の11時くらいになると撃沈したおっさんたちが店の周りに転がっています。女子供が親父を回収にやってきています。まったくこちらの女性は大したものです。以前住んでいた場所の近所には団地がありました。夜その団地の前の川で釣りをしていると、酔っ払いが上機嫌で帰ってくるのです。通り過ぎる車に悪態をつき、足早に抜かす女性に「おねぇちゃぁ^〜んあそびましょ〜」と下卑た声をかけています。女性が走って逃げていくと「けっ、安モンが」と言っている体たらく。そして自分の家のドアの前に立ち「あけーろー」「おかえりだー」と威勢良く叫んでいます。ドアは開きません。すると酔っ払いは「このおま#こ、あけろー」「ばかがぁ〜」「いいからでてこーい」と口汚く罵っています。突然酔っ払いの声が途切れて乱暴に閉まるドアの音が響きます。何もなかったかのようにし〜んと静まり返ってしまう団地、あれだけ威勢のよかった酔っ払いの声ひとつ聞こえないのです。僕は身の毛がよだつ思いでした。あんな威勢のいい酔っ払いを一言も発せずに黙らせてしまうドアを開けた者の正体はいったいどんなおそろしい者なのかと想像してしまったからです。そそくさと竿をたたみ退散しました。

ここの犬は夜になると凶暴化します。昼間はあんなにおとなしいのに夜の10時過ぎあたらりから一変するのです。村のあちこちからワンワンと激しい鳴き声が響きます。ときにそれは喧嘩になり、数匹の犬が大げんかをしているのがわかります。一度喧嘩が始まるとまるで村中の犬が一斉に吠えているかのようにあちらこちらからワンワンと絶え間なく聞こえてくる鳴き声。まったくうるさくてかないません。山から村のメス犬目当てで野良犬が降りてくるらしく毎晩のように喧嘩三昧です。ホテルの前の家で飼われているバカ犬はいったん火がつくと30分ほど疲れるまで鳴いています。窓から顔を出し永遠と鳴き続けるから始末に負えません。
猫も参戦です。猫同士のときもあれば犬とも喧嘩しています。どこから犬も登るのかトタンの屋根の上をドコドコと走り回る音は静かな夜の村に響き渡ります。そんな犬猫にとって一番の敵は酔っ払いです。

さらに夜が深まると犬や猫が喧嘩しているとこへ参戦する酔っ払い。彼らは夜の王者です。ここは酔っ払いの天敵である冬の寒さがないので敵なしです。日本の団地に住んでいるようなおそろしい敵もここにはいないのです。犬猫はこっぴどい目にあわされるようで猫がブギャーと悲鳴をあげています。何度も振り回されているのか、どこかに叩きつけられているようです。犬も同じで酔っ払いは彼らの大敵です。犬の場合は周りの仲間が吠えまくるので酔っ払いも怒鳴り声を上げています。犬と猫の違いは猫は死ぬまで慈悲を請わず、犬はすぐに悲鳴をあげるのです。負け犬根性といいますがこんなところからきているのかもしれないなぁと彼らの悲鳴を聞きながら考えてしまいました。翌朝、裏路地を歩いているとおそらく酔っ払いとの喧嘩に負けた猫が瀕死の状態か死んで転がっているのを見かけます。目が飛び出し、頭が半分割れている猫、生きてはいるけど動けない猫、意外と人間って強いのだなと妙なところに関心してしまうのです。でも犬は不思議と見ないのです。あの哀れな声に酔っ払いも慈悲の心が沸くのでしょうか。無残な姿の猫もすぐに消えてなくなってしまうのが不思議です。村の人が片付けてしまうのか、犬に食べられてしまうのかわかりません。真相は謎のままです。

どんなに犬猫が騒がしくても、やっぱり夜の王者は酔っ払い。意外と彼らが人間と動物の秩序や優劣を決めているのかもしれません。あまり役には立っていないような物であってもきっと何かの役割があるような気がしてちょっと微笑ましく思ってしまうのです。人間社会では冷たい目で見られていますが僕は彼らが凶暴な犬猫から村人を日夜守っているヒーローのようにも思えるのです。頑張れ夜の王者酔っ払い。

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