日々雑思 ガラクタのような旅のカケラ

ある日

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あんなに元気だったのに

起きて屋上に出る。乾いた風が昨夜の雨をなかったことにするかのように湖面から吹き渡ってくる。風呂場に干しておいたシャツを軒先に吊るした。2時間もあれば乾いてしまうだろう。
足元を見ると水たまりにミツバチがもがいている。羽がコンクリにすっかり張り付いてしまい足だけをジタバタと駄々っ子のようにさせている。珍しく仏心が出て助けてやる。刺されるのではないかしらとちょっと怖かったが指の先でそっと転がしてやると起き上がった。身体中に水が張り付いているのか、しばらくジッとしている。やっとよろよろと歩き出し、羽をゆっくりと動かした。どこか悪いのか歩き方がぎこちない。後ろ足がうまく動かないらしくすぐに伊座ってしまう。お天道様と風に早く乾かしてやっておくれよと頼むがミツバチは夢遊病者のようによろついている。少し歩くとすぐに転んでしまう。一度助けたのも縁だと思い再び転がしてやるが、しばらくするとまた転んでしまう。刺すつもりもないだろうと5回ほど手伝ってやったところでブンと羽をバタつかせたが様子がおかしい。しきりに後ろ足をすり合わせ身体を震わせている。やがて足が止まると羽をツンとまっすぐに立て身体をダンゴムシのように丸めてしまった。キラリと光っていた目が砂利のようくすんで動かなくなった。コンクリの上ではさぞかし無念であろうと思い鉢植えの土の上に置いてやる。お尻から出た針が指先に触れたがもはや刺すこともなかった。

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サンペドロの夜は静か

 

 

 

 

 

ある日

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チキンバス

町から移動する前日、念のためにとあらかじめバス停を確かめに行く。バス停はすぐにわかり隣接する市場を抜けて大通りに出た。交差点を渡ろうとしたとき、灰色の猫が歩道から飛び出した。途端、やってきた車とぶつかった。猫は身体をよじり戻ろうとしたが間に合わず、車の後ろがわずかに持ち上がった。路上に転がった猫の足は空中を必死にかけている。逃げなければという本能が丸出しになり鬼気迫るほど足はぐるぐると回転する。身体をよじってもがいているところへ続けてもう1台がやってくる。運転している女は何も見えないかのように猫をふんずけた。ゴットンと音がするかのように前輪が猫の上に乗り上げていった。猫はそれでも力なく性への執着を見せるが、やってきたもう1台に轢かれグンナリとなり身体から力が抜けていった。ビロードのような毛並みから光が失せ、ボロ雑巾の色へと変わり、染み出してきた赤がそれを洗った。運転手には見えていないかのように次々と塊となったそれを轢いてゆく。あっという間にぺしゃんことなり、もはやそれがなんであったのかわからなくなった。

 

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屋台の青年15歳

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対岸の村はさらに貧しく

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黄色い明かりがいいのです

 

 

 

 

 

 

ある日

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この悲しみは・・・

知った女の子に会う。彼女は犬を2匹飼っていた。新しい子犬を抱えていて甲斐甲斐しく世話を焼いている。子犬はうんざりした顔をありありと僕に見せつけた。5歳の女の子なりの優しさが伝わってくる。初めからいた犬が僕のところへやってきた。頭を撫でてやりながら僕は彼女にもう1匹はと聞くと「Ya morio」(すでに死んだ)と言う。どうしてと聞くと事故だ車に轢かれた。探しにいったが死んでいたと少し悲しそうな顔になった。聞くべきではなかったと思ったが彼女が子犬を持っている訳がわかった。彼女はこの犬にはまだ名前がない。前の犬もなかったがこの犬には名前をつけたい。お前は悟空を知っているかと言う。知っている,アニメの主人公だと答えると、彼女はこの子の名前にどうだと聞く。いい名前だと答えるとGokuと愛おしそうに声をかけた。子犬は自分のことだとは理解できず相変わらずだらりと足をぶら下げて解放されるのを待っていた。僕は名前をつけてはいけないよ。名前がつくとその毛むくじゃらの愛らしい畜生が実態化してしまうんだよ。死んだあの犬は名前がなかったから良かったんだ。名前をつけてはいけないよと心の中でつぶやいた。
ある日

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最近多くなったような

部屋にいると外から楽団の音が聞こえてきた。屋上に出て下を眺める。レースのベールを被ったご婦人の列とそれに続く男衆の肩には花で彩られた棺が担がれている。パーパパパーパパパーララーと聞きなれた曲に合わせて葬列はゆっくりと墓地へと向かって行く。いつもはうるさい車のクラクションも今日は鳴らない。代わりに爆竹が行く先で鳴らされてばちんばちんと弾けている。子供達はしゃもじのお化けのようなものが先に付いた棒をぐるぐると回しジャラジャラと鳴らしている。ここの葬儀はにぎやかだ。人々は抱き合い挨拶のキスを交わす。うなだれながらもどこか楽しげな雰囲気が漂う。隣近所、町内会総出の弔いがこの地の習わしだとホセから聞いた。民族衣装も普段とは違う落ち着いた色のものを着ている。教会の庭先で花火が等間隔で打ち上げられバーンと空気を震わせる。合わせて教会の鐘がカランコロンと鳴り響き、村全体が音に包まれてまるで音にのせて死者の魂を空にいざなっているように感じる。きっとあの棺の中には色をなくした塊がひっそりと何処かへ消えてしまう準備をしているのだ。早く土になっておしまい。1日も早く腐って無くなっておしまい。ここはもうあんたのいる場所ではないんだよ。いるべき場所に向かいなさい。あの音がきっと連れていってくれるから。楽団が遠くに去ってがらんとした道をずた袋にゴミを集めて歩く青年の姿があった。

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ミサの帰り

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暗さの中の明かりはまぶしく

 

 

 

 

 

 

今日の一言
久しぶりに書いた日々雑思、相変わらず下手な文章だと嫌になるのです。でもこうした日々の小さな出来事が少しづつ心に残りいつまでも張り付いて離れないのです。行ってみたい世界遺産より、お土産を物色するより、名物を食べるより僕はこうした小さなことが気になって仕方ありません。これまでの旅でもそうでした。スラムで見たハエの塊、パリの地下鉄の出口に座る子供乞食、シンガポールの生き物のいない島、タイで見た疲れたオカマ。僕の心に残っているのはそうしたガラクタのようなカケラばかりなのです。何が起きるわけでもなく淡々とした事実が僕の心を鷲掴みにして離さないのです。これを書いている今、窓から見える湖と村、風に乗ってやってくる何かを焼く匂い、安物のスピーカーから流れるつまらない音楽が僕の記憶を作っていきます。旅なんてそんなものなのかもしれません。でも僕はそれが大好きなのです。

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