歌舞伎はワクワクする芸能だった

kabukiza_201410f_m

 

 

 

 

 

 

 

ある日

歌舞伎座。「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」好きな幕だけを気軽に鑑賞出来る一幕見席。歌舞伎を初めて見る客にはうってつけだ。1600円。「座れるかしらと」マリーと並んでひそひそと話す。

初めての歌舞伎座、席に座って辺りを見回す。ざわついた会場に拍子木の音が1つ鳴る。案内役の古めかしい女子がせわしく会場を巡る。ワクワクしてくる気持ち。マリーも英語の演目に目を通しワクワクしてくる気持ちになっている。

拍子木が2つ鳴る。会場がくらくなり太鼓の音がぽこぽこと鳴った。幕がひかれていく。涎くり与太郎 (国生)と子役が舞台に並び演目が始まった。ワクワクしてくる。松王丸 (中村仁左衛門)武部源蔵 (勘九郎)戸浪 (七之助)と矢継ぎ早に登場する。マリーの隣のスーツ姿の男が「なかむらや」と大向こうのかけ声をかけた。ギョッとするようにマリーは男を見る。そばからそっとマリーに「ダイジョウブ、カレハキチガイデハナイカラ」と押し殺して声をかけた。ねっとりとしたその男の大向こうにワクワク感がだだ下がりとなった。

休憩。私たちは席を立ち出口に向かう。同じように他の客も席を立つ。おばさんたちは「カンクロウキレイ。シチノスケイイオトコ。」と好き勝手なことを言い合っていた。隣のねっとりとした男はもう1枚チケットを持っていて、ごくごくとペットボトルから液体を流し込んでいた。マリーは着物姿のおばさんたちが気になる様子だ。「写真をとってやるから話をつけてくる」と言っておばさんたちに「マリーと一緒に写真を撮ってくださいな」とお願いすると全員が全員打ち合わせたかのようにポーズを決めた。怖さがふつふつとこみ上げてきて「あうあう」とお礼を言って退散した。

帰り。銀座の街を歩く。マリーは高価な店が入るビルの写真を撮れ撮れとせがむので片っ端から撮ってやった。突然マリーがすっとんきょうな声をあげコーヒーショップを指差して笑う。「何だ」と聞くと「ヒデキはプロントの意味を知っているか」と言う。言われてみればくつろぎの空間なのにせかすとは笑える。マリーはワクワクしてファニーとつぶやいた。

おわり

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です