日本語のツアーは高いのか?

「ちょっと相談に乗ってもらえますか?」僕らは何を相談されるのかとちょっとドキッとしました。それはその青年があまりにも思いつめた物言いだったからです。話を聞くとこちらのツアー会社で日本語ガイドとして働くかもしれない。でも現地に来てみれば安いツアーがたくさんあり内容も遜色ないので日本人を食い物にしているようで倫理的に許せない。という内容でした。彼は日本の製薬会社の営業として働いていたけれど薬の効き目に疑問を持ちつつ販売しているのが嫌でメキシコに来たようです。

若さゆえ真面目さや正義感が強く正直な生き方をしようとする青年という印象です。彼は着いたばかりで物価やメキシコの最低賃金、人々の生活、仕事内容など何一つ目の当たりにすることなくすべて日本という国の基準で物事を計ろうとしているようでした。僕はちょっと意地悪にいいんじゃないの好きで申し込んでるんだから。日本人なら払えるでしょ?と答えました。彼が納得いかないのも無理ありません。でも何も見ていない彼にいちいち細かく説明するほど僕もお人好しでもありませんし、もちろん親切な人でもないのです。

日本語のツアーは果たしてぼったくりなのでしょうか。ずっと日本で暮らし実際に英語もスペイン語も話したことがない海外旅行も初めてという若い二人にとって不安の大きさは大変なものでしょう。空港を降りてからホテル街に向かう地元のバスを探したり、ツアー会社が並ぶ通りに赴き1軒1軒価格を比べ交渉し、指定の場所に出かけていく、または自力で交通機関を乗り継ぎ現地に赴く。ホテルに帰ってもぐったり疲れレストランでの食事も淡々と胃に運ぶだけ。余程旅慣れたカップルでなければ楽しいはずの新婚旅行は苦労の連続で終わってしまうでしょう。
そこで利用するのが現地日本語ツアーです。日本で事前にインターネットで詳細な内容を知ったうえで細かなリクエストまで可能です。当日の朝、ホテルの玄関に日本語ガイドが指定時間に迎えに来てくれ、必要なものはすべてお膳立てされています。行程のやりくりや多少のわがままも笑顔で応じてくれるのです。何時間も退屈なバスに揺られることなく専用のバンで現地へ。要所要所で教えてくれる情報は現地日本語ガイドならではわかりやすさ。質問も日本語で言葉の裏まで読み取ってくれます。ホテル街なら通じる英語も一旦外に出ればスペイン語しか通用しません。普段簡単にできることすら苦労するのです。トイレって単語はなに?いくらですかってなんて言うの?そんな不安が山ほどあるのです。でもガイドがいれば何の心配もいらないのです。

日本からの旅行者が1泊する値段で僕はカンクンにひと月滞在できます。僕が泊まる安宿に来るのは大半がバックパッカーです。彼らは英語を操り、スペイン語にも物怖じしません。少しでも安く内容の充実したツアーを自力で探すのです。この両者の違いは資金力でしょうか。僕はそう思いません。バックパッカーは長期の旅行ができる、時間をたっぷり持った人々なのです。多少の不便や言葉の問題など彼らにはないと言って差し支えないほどたくましいのです。それでも彼らが苦労して見つけたツアーでさえ半額の料金はかかりますし、時間はさらにかかるのです。

日本人を扱うツアーは確かに英語のツアーに比べると2倍近い価格です。それだけをみれば確かに高いでしょう。カンクンは世界でも有数な新婚旅行のメッカ。ここに来てリゾートホテルに泊まる日本人はツアー会社に赴き人生の門出にふさわしい旅行を10日ほど楽しむ人が大半です。彼らにとって大切なことは良き思い出作りです。限られた期間の中でやりたいこと満載の彼らにとって最も大切なのは時間なのです。

それでも現地の格安ツアーで成り立っているのに日本語ツアーはぼったくりすぎと言う声が聞こえてきそうですね。でも本当にそうなのでしょうか。現地ツアーの価格からツアーバスの燃料、遺跡の入園料、運転手の賃金、ガイドの賃金、ツアー会社の人件費、それらを考えれば僕は途中寄る土産物屋からのバックマージンがなければとてもやっていけないと思っています。またこうした会社で働く現地人の賃金は驚くほど安いのです。ある遺跡のツアーを例にするとツアー代金は約600ペソ。この中には交通費(個人でいけばバス代往復516ペソ、高速道路代80ペソ)、入場料(232ペソ)、昼食代(40ペソ)、セノーテ入場料(30ペソ)が含まれます。単純に計算すれば大幅に足が出てしまいます。催行を10名でやったとすればツアー会社の交通費はガス代が浮いてくる計算ですがその中から必要経費を捻出することを考えれば運転手やガイドの日給は自ずと知れてきます。朝7:00から夜9:00までのこのツアー。あなたなら働きますか。日当にして10〜15ドルです。家賃が2500ペソから3000ペソ(150ドルほど)1回の食費は20ペソから40ペソ1日50ペソと計算して月に1500ペソこれで給料のほとんどが飛んでしまうことになります。それでもメキシコ人が生活できるのは家族で働くからです。15歳にもなれば立派な働き手です。地方の町では10歳の子供も働いています。
夕食後、彼が食事代を払いにきました。僕はこのカツカレーにいくらなら払うと聞くと彼は30ペソと言いました。彼はすでに夕食代を聞いていたからです。そこで僕はこのカレーをレストランで食べたらいくらすると思うと聞き直すと50ペソと答えました。実際にカツカレーを扱うレストランはありませんが、チャーハンで150ペソ、ラーメンで120〜150ペソという価格を考えれば200ペソほどになるでしょう。日本円にすると1100円ほどです。彼は怪訝な顔をしています。食材費だけで手間賃は一切なしの価格7倍の料金を払っているという感覚を持てない彼には理解できないようです。僕は君の悩んでいるツアーでも倍以上の価格を取っても日本というブランドがつけば高くないと思うよ。今日出かけたツアーはどうだった?あれで成り立つかな?と聞くと彼は成り立ってるからやっているんでしょとちょっとふてくされてしまいました。
外国で働くということを彼は今後どのように自分の中で消化していくのでしょう。はじめは現実とのギャップに理不尽を感じるかもしれません。でも半年後には彼もきっとこうした仕組みが分かってくることを僕はすでに知っています。真面目さゆえに日本の会社でやっていくことが難しかった彼。一度飛び出してきた外国で何かを掴んでもらいたいものです。
今日の一言
グアテマラに行くための飛行機は24日、そこから4日ほどかけてサンペドロに向かいます。バイクの保管や戻ってきてからのメインテナンスに不安はありますが行くしかありません。

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日本語のツアーは高いのか?」への2件のフィードバック

  1. あおき

    ふーむ…旅行や旅先の時間をどう使いたいか
    なんですかね。自分で苦労してでもやってみたい、その行程を楽しみたい人と
    日本語ツアーにお金がかかっても、苦労せずバカンスを楽しみたい人と。

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  2. HIDEKI 投稿作成者

    あおきさん
    はやっ!読んでいたんですね。自分が1箇所にとどまっていると様々な旅人が通り過ぎて行きます。彼らから学ぶことは多く時にハッとさせられます。僕は現地のガイドさんや仕事をしている人たちを知っているだけにこうした話を聞くと取っても考えさせられるのです。
    現地の人は文句を言いながらもたくましく、そして楽しくやっているのを見ていると豊かな人生とはなんだろうと考えさせられます。トラブル続きの今でさえ僕は楽しいのです。豪華な旅行者も貧乏パッカーもどちらもありですよね。

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