土日通信 その汚さはファッションか

旅人のスタイルは様々です。それは移動、宿泊、持ち物そして生活まで実にバリエーション豊かで見ていると参考になるのです。これまでどれだけ彼らから知恵を得てきたかわからないほどです。長く旅をしていると段々と身だしなみや衛生面が乱れがちになってきます。風呂に何日も入れなかったり食器類を洗うための水が確保できなくて拭くだけで済ませたりと止むに止まれぬ事情があるのです。

旅人は汚さに慣れることも必要な能力の一つでしょう。とても裸足では入る気がしないシャワー。便座のないトイレ。使う気になれない宿のキッチン。いかにもダニがいそうなベッド。壁を這うゴキブリ。食べ物にたかる無数のハエ。衛生状態の劣悪な市場などなど。こうした生活に密着する場面ではある程度の我慢と慣れが必要になります。でもそんな環境でも身体を洗い、洗濯をする。旅でついた汚れをギアから落とし、手入れをして少しでも長く使えるようにするのです。

こうしたサバイバルにも似た生活の道具はアウトドア関係のものが大活躍しています。軽量コンパクトで丈夫でいて高機能な道具は1960年代のアウトドアブームをきっかけに進化しています。服も同じです。アウトドアっぽい格好のものばかりでなく音楽フェスを楽しむ人々が好むような色使いやスタイルに気を配ったデザインの服も多くなってきました。それらのデザインは途上国に見られる民族衣装の雰囲気を取り入れ素敵な感じに仕上げられています。すぐれた道具や服を輩出してきた背景にはアメリカのヒッピー文化が一つの要因としてあります。当時はまだ戦争で使用した道具を流用したりして頑丈ではあるけれどイマイチといった感じでした。自然回帰を提唱した若きヒッピーたちが必要に迫られて工夫を凝らしながら進化したそれらの道具が昨今の旅人たちを助けています。

ヒッピーとは – 1960年代にアメリカで青年たちを中心とした反体制、自然回帰を提唱して既成社会体制と価値観からの離脱を目ざした人々のことを指します。ベトナム戦争などを背景としたこの運動は多くの旅人を排出しました。彼らはアメリカ中でワイルドライフを楽しみながら放浪していました。当然成りは汚くなり、異臭を放っていたでしょう。それはそれで一つの文化として映画や書籍でも描かれています。

海外を旅しているとびっくりするような格好をした旅人に出会います。特に途上国に多く見られる彼らの特徴はボサボサの髪の毛をカラフルな紐でねじり束ね、ヒョロヒョロとしたヒゲを蓄えて、ヨレヨレのオーバーサイズのタンクトップもしくは民族衣装のような服をだらりと着てビーサンを履いているのです。大抵男女何人かがまとまって安い交通機関を町の片隅にしゃがみ込んで待っていたりします。垢でまっくろになって煤けた顔、足も真っ黒です。身体からは異臭が漂います。頭に溜まった虱をプチプチと潰す女からは大麻の匂いがプンプンします。隣に座る青年は不恰好に巻いた手巻きのタバコに何回も火を付け直しています。

サンペドロでも年末年始にかけて開かれた音楽フェスタに参加するために多くのフェス好きが訪れていました。露天を開く者、大道芸を披露する者と様々です。このような音楽フェスは魅力的な場所です。暮らすように旅をする彼らは大切な稼ぎの場でもあるからです。僕はフェスを楽しむ彼らのことを羨ましくも思っているのです。そうした旅人の中に汚い格好をした旅人がいました。いかにもといった感じの彼らは悪さをするわけでもないし少しだけ騒ぐ程度で実害はないのです。でも僕はそんな彼らを見ていてふと思ったのです。民族衣装を着ている町の人のこと。彼らが泊まる宿の人のことです。

僕が見た汚い旅人の着ているものは色使いが民族衣装に似ていました。とても汚れていて清潔感を感じるどころか目の青さや髪の色がなければ浮浪者と見間違うほどです。違うグループは僕と同じ言葉をしゃべる国から来ている人でしたが、その汚らしさに僕は乞食と見間違えてしまいました。地元の人たちはとても清潔できれいに洗った着物を着ているのです。身だしなみはとても気をつけていることはすぐにわかるのです。民族衣装は可愛らしく、着てみたい衝動にかられるものばかり。それをファッションとして取り入れ、可愛く着こなす人はとても素敵です。良く整えられた出で立ちは汚い旅人と同じでも嫌な感じがまったくしません。町の人も好意的に見てくれているのがわかります。でも汚い旅人を見る目は明らかに違っていました。受け入れがたい感情を持っていることは明らかです。僕が見たアメリカの田舎には小さなコミュニティーがあり裸で暮らす人たちもいました。でもそれは彼らのコミュニティー内だからこそ許されるのであって、既存の社会では受け入れられないことを彼らも承知しているのです。
明らかに汚さをファッションとしている感性はわかりませんが理解はできます。でもそんな成りでドアを叩かれた宿の人はどう感じるでしょう。虱やナンキン虫を持ち込まれ寝具を汚され、部屋にマリファナの匂いを染み込ませられたらそれは迷惑であって歓迎できるものではないと思うのです。彼らが立ち去った後に掃除が行き届かなければ虫の出る宿として旅人から見捨てられてしまうのです。

ネガティブなイメージがついてしまえばどんなに素敵な衣装や宿であっても人はそうは見ないでしょう。旅先で外国人は汚いし騒ぐなどの負のレッテルを貼られてしまうのはちょっと悲しいことです。だから今日僕は声をひそめてそっとブログでつぶやくことにしました。
”そこのあなた!同じ格好をしていても清潔感を保っている人はとても素敵に見えますよ。持ち物がボロくたって手入れをして大切に使っている人の物は風格さえ漂っていますよ。ベッドでマリファナを巻く前にちょっとだけお風呂に入ってきなさい。その臭い身体を水と石鹸で洗っていらっしゃい。まったく似合わないそのヒゲを整えなさい。野良犬のように汚れた髪をいじっていないで解いて洗いなさい。そしてそのボロも洗濯しなさい。終わったら日向で干しなさい。石鹸と太陽の匂いがする服を着ればバスで一緒になった人も嫌な顔をしないでしょう。旅人はお金がないのが当たり前、でもちょっと気を使うだけでとても好印象に見てもらえますよ。”

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