みんなが気に入っているこの国の雰囲気について考える

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夜の街は静かでした。通りの街灯は暗く、インフラが整っていないことがわかります。建物もかなり老築化が進んでいます。一部が崩れ、人が住めなくなってしまっている建物も少なくありません。道路も舗装はされていますが荒れていて所々穴も開いています。水道管から漏水しているのでしょう、道に水が染み出しています。家々の窓やドアの木枠も朽ちています。窓枠にはめた磨りガラスが割れてそのままになっています。他の国ならスラム街に近い街並みなのにここにはあの独特の危険な感じがありません。

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臭気や刺すような視線を感じることも、あからさまに軽蔑を意味する言葉もかけられません。人々は親切で平和な雰囲気が満ちています。テラスから道路を見下ろしたり、向かいの棟の友人と話していたりする姿はとてもリラックスしています。逆に道路から上を見上げ大きな声で友人を呼んでいる人、4階から長いカギ棒がついた紐をスルスルと下ろして何か品物を受け取っている少女、それらの光景はほのぼのとしていました。

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若い旅人は一様に”この国はなんかいいですね”と言います。彼らはそれを具体的に言うことが出来ないでいますが、僕は彼らが感じている良さが何かを明確に感じるのです。それは人々の過ごし方なのです。この国はまだネット環境が十分ではありません。町で携帯をいじっている若者をほとんど見ることがありません。友達との会話を楽しみ、年寄りから子供まで世代を超えたつながりがあるのです。夕方になると人々は表に出てきて涼をとってくつろいでいます。親が見守る前で子供達は様々な遊びに興じていて屈託のない笑い声が建物に反響しています。若い人はインターネットが繋がる公園に行き楽しそうにネットを見ていますが、日本の光景とはちょっと違います。4〜5人で一つの画面を見ながらワイワイとしているのです。そこにもまた人と人との会話があるりました。老人は入り口の階段にちょこんと座り葉巻をくるらせています。たなびく煙がなければそこだけ時間が止まったかのようです。

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バーでは古いカウンターに寄りかかり一杯30円のビールをチビチビと飲む者、時代を感じさせるテーブルに座り友人とくつろぐ者、一人で喋っている陽気な酔っ払い、静かに葉巻をくゆらしラムを舌の上で転がす者、各々の楽しみ方でゆったりとした時間を過ごしているのです。誰も店員に”あのお客がうるさいから注意してくれ””葉巻が臭い”と文句を言うような人は皆無です。店員も客の話に引き込まれ、仕事を忘れてビールのお代わりを待つ人がいることにも気がついていません。待っている人も首を傾げて待つしかないよと言った感じです。僕らはそんな自由を楽しむ人々のスタイルに心地よさを感じているのです。人と比べず、違うことを恐れず、一部の声の大きな者が決めた道徳観に縛られることなく生きることができる姿に自然であることを感じるのです。問題があればその場で当事者が小さな言い争いや文句を言って落とし所を探しています。筋論クレイマー的なことを言う人は見かけることなく、自分の思いを素直にぶつけ合っているのがわかります。だからこそ問題はすぐに片付いて後に残らないのでしょう。
人のつながりが街を支えている良さがこの国にはあります。匿名でない生身の人達が繰り広げる人間模様はまるで2チャンネルを実名で見ているかのような楽しさです。陰湿な嫌がらせや気分が悪くなるようないじめを抜きに「せやで」とか「それあかんやつや」といったツッコミが現実の世界で起こり、人の喜怒哀楽を目の当たりにできるのです。若い人がそれを見て面白くない訳がありません。

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世紀末伝説の物語に出てくるようなオンボロで時代遅れの建物の街で繰り広げられるこのショーは後数年しか見られないかもしれません。経済封鎖が解かれ、ものがなだれ込んできたらこの国の若者はあっという間に変わってしまうでしょう。彼らは革命を知らない世代なのです。ネット環境が日本のように高速化したら人は部屋から出てこなくなってしまうのでしょうか。自分の主張をはっきり言わず遠回しに本人に伝わるように画策する知恵が当たり前になるのでしょうか。建前論に窮屈な思いをしながらそれを頑なに守ろうとじっと身を潜めるのでしょうか。玄関先でタバコをくるらせていた老人はベッドに横たわり管を通して栄養補給を望むのでしょうか。自由に歩き回る犬は捕らえられ殺されて行く運命しか残されていない。誰もしゃべることがないバスの車内、席を譲るにも邪推されないかおののき、人に声をかけようものなら警察に通報されてしまうような疑いに満ちるのか。僕にはわかりません。

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街からはこじんまりとした店が消え、その代わりオープンカフェが並ぶ通りが現れ、大道芸人が玉や楽器を使い芸能を披露する。2ブロックごとにスターバックスの緑の看板があり、通りの空には巨大な黄色と赤のMの文字が立ち上がる。ハードロックカフェで毎晩大音響の洋楽が響き、青、赤、白からなる星印のついたストライプデザインを身にまとった体のでかい人々が短パンTシャツ姿で我が物顏で街を歩く光景がこの国にも現れてしまうのか。自分がどこの国にいるのかさえわからなくなってしまう日が後数年でやって来るかもしれないなどと誰が考えているでしょう。

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この国は歴史の教科書に載っている革命家が今も生きて政(まつりごと)を司っている稀な国です。列強と呼ばれた大国の思惑に左右されず独自の文化を守ってきました。勝手に植民地にされ奴隷売買のメッカとして人類の負の歴史を背負わされてもなおアイデンティティーを失わなかった国を僕は他に知りません。この国の指導者がこれから来るであろう大きな変化にどう対処するのか非常に興味が出てきました。願わくばアメリカと対等な関係を築き、自国のアイデンティティーを喪失することなく人々が潤えるような発展を遂げてくれたら僕はもっとこの国が好きになるかもしれません。

 

この国で人が倒れると

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公園の片隅で突然、中年女性が大きな声で何か叫び始めます。ただ事ではないことがすぐにわかりました。彼女はベンチにもたれかかる様に動かない母親と思われる老女を抱きしめますが彼女の体はぐんにゃりと力が抜けてブラブラとするだけです。彼女の悲鳴に気がついた人々が老女の異変に気がつきました。すぐに数人の男が彼女から老女を引き離し、抱きかかえます。道に飛び出しタクシーを止めると数人で老女をタクシーに乗せました。老女の体はすでに力なく手先から魂が抜けていくかの様に宙をさまよっています。中年女は泣き叫びながらタクシーに乗ります。気が動転してしまい我を忘れています。老女を乗せたタクシーは走り去って行きました。土曜日の昼前に人々で賑わう公園で起きた出来事でした。

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僕は何事も起きなかったかのような元の賑やかな公園のベンチに座り、この国での老人医療や介護はどうなっているのだろとフト思いました。町で見かける老人は一様に元気そうに見えます。足取りも確かで寝たきり老人という言葉がこの国にはないのじゃないかしらと感じます。日本の医療現場で行われる胃瘻などはおそらくこの国にはないでしょう。ただ生命を維持するだけの医療とはなんなのでしょう。家族の気持ちや医者が治療を決断できない日本が抱える問題をこの国はどのように解決しているのか知りたくなりました。

 

 

停電

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稲光と共にザーと雨がやってきました。熱せられたコンクリはみるみる冷えていき、雨上がりには涼しい風が街中に吹き渡りました。雨宿りをしていたカフェテリアから出てカサに戻ります。大通りの向こう側が真っ暗です。停電だとすぐにわかりました。人々は懐中電灯を使い明かりを灯しています。何事も起きていないかのように真っ暗な通りに人が溢れています。キューバ人は暗闇でも見えるのかと驚きました。宿に戻り真っ暗になったロビーのロッキングチェアーに座ります。路上でくつろぐ人の声は明瞭になり、遠くに聞こえるサルサが音符となって夜風とともにやってきます。

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窓の外に見える建物は、おぼろな月に照らされて漆黒の影となり、遠い昔の威厳を取り戻しています。グラスに注いだラムから甘く気だるい香りが立ち上り、モンテクリストの葉巻の煙に絡みついて妖艶な暗闇を演出します。僕はこの時キューバという国を確かに感じることができました。長い年月をかけて熟成されたエロスであり、生の人間が発する強烈な匂いです。まるで濡れたシルクのようにまとわりつく空気、汗さえも玉になり転がり落ちていくような滑らかな肌を持った女性にのしかかられているような心地よい圧迫感がそこにはありました。

しばらくして明かりがパッと点きました。その途端町中から歓声が上がります。彼らもやはり困っていたのでしょう。インフラが脆弱なこの国では停電は日常茶飯事です。1時間ほどの短い時間でしたが、濃密なキューバがそこにはありました。

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