よろず走り書き13

IMG_5718悪ガキと正直者は同じように可愛らしい

メキシコの田舎の港町に着きました。ここでは釣りをすることが目的です。すぐに子供が寄ってきます。DonatoとAbelの兄弟です。子供はこちらが話せようが話せまいが御構い無しに質問攻めにしてきます。彼らの好奇心は言葉を超えてしまっているのでしょう。彼らの使うスペイン語は簡単です。とてもストレートに聞いてくるのでこちらも勉強になります。何回でも同じ質問をしてくれるのでだんだんとわかってきます。IMG_5719子供とのやりとりはとても楽しいものです。

二人に釣りをさせてみると楽しそうにやっています。彼らは目がとてもいいのです。僕には見えない深みにいる魚の色まで教えてくれます。僕は見えるの?と驚いてしましました。さすがは漁師の息子です。翌朝は早起きして港へ行きました。薄暗い中、二人は僕を待っていました。しばらく一緒に釣りをしながら僕は”学校は?”と聞くと曖昧な返事をしています。そこへお母さんが現れて連れて行かれてしましました。どこの国でもお母さんは厳しいものです。

IMG_5735午後は磯場にいって釣りをします。一人の男の子がやってきました。彼は僕の釣具に興味津々です。しばらくして彼は友達を連れて再び現れます。同じように彼らは僕に質問攻めです。次々に僕の釣具を触り質問をしてきます。ワームに興味津々で、ちょっと目を離した隙に一人の男の子が食べてしまいました。かなり毒性が強いので吐き出せといっても彼はもぐもぐと食べてしまうのです。かなり心配になりましたが時すでに遅しです。彼らの好奇心はとどまることを知りません。ちょっとイヤーな予感がしましたが、魚がかかるのでちょっと油断していました。 そろそろ引き上げようと思い、釣具を確認するとやっぱり無くなっています。僕は大切な物だから返してと言いました。

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するとみんなが最初にきていた男の子を指差します。彼はまず釣り糸を返しました。”もっと”と言うと徐々にポケットから出していきます。帽子の中、土の中に埋め、ズボンのポケットそこらじゅうから出しますが全部は帰ってきませんでした。油断した僕が悪いのです。彼らからしてみれば言葉の喋れない外国人ならちょろいという感覚もあったのかもしれません。集団できた時にすべて片付けるべきでした。仕方なくホテルへ戻ろうと浜辺を歩いていると一人の男の子が僕のところへ来て、彼はまだ持っているというのです。盗んだ男の子は海に逃げます。こちらが追いかけてこれないと思ったのでしょう。すると仲間が彼に何かを言いだしました。返せと言っているようです。男の子は必死で何か言っていますが仲間は彼を追いかけて海に飛び込みました。

僕に知らせてくれた男の子も僕にシャツを預けて飛び込みます。みんなで彼を説得しますが、男の子は持っていないと言い張っているようです。やがて大人たちも気がつきます。僕に何かを聞いてきたので、僕の釣具を取ったのだと言うと、警察に行けなどと口々に言いだしました。僕は大人たちを抑えてもう少し待つと言いました。盗んだ男の子を仲間が押さえつけました。一人が僕のところに来てナイフを貸してくれと言います。彼のズボンに引っかかって取れないと言っているようです。僕は小さなハサミを渡しました。しばらくすったもんだの末、僕の釣具はすべて戻ってきました。大人たちもそれ以上何も言わず、僕に何か声をかけてきます。警察に行くかと聞いているのだと思った僕はいかない、子供だからいいんだというと彼らもすまなさそうにしていましたが、ホッとししているようにも見えました。僕に教えてくれた男の子にありがとう君は正直者だねというと彼は小さく頷いて仲間のもとに戻って行きました。

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またしても僕は失敗してしまいました。日本製のしかも高価な道具を見た彼らからすれば欲しくなるのは当然です。そんな物を見せびらかした僕がいけなかったのです。綺麗なルアーや透き通った糸を見れば子供なら欲しくなるのは当たり前です。僕の不注意からこんなことになったのです。でも一人の男の子が正直に教えてくれたことが僕は嬉しかったのです。それは意外なことでもありました。普通なら絶対に戻ってくることはないだろう思っていたからです。田舎の子供の素直さがここにはあるのだと感じました。彼らの目は綺麗です。とても透き通っていて純粋さに満ち溢れています。遊ぶことが大好きで釣りやサッカー、泳いだり常に動き回っています。彼らのルールや掟がそこにはあり善悪のけじめを持っているのです。

お父さんがヒュイと口笛を吹くと彼らはすぐに行ってお父さんの漁の片付けを手伝っています。彼らにとってお父さんは絶対的なヒーローであり彼らにすべてを教えてくれる師なのでしょう。仲間と共に善悪を学び、父から生き様を学べる彼らを僕は羨ましく思いました。ちょっとした事件ではありましたが僕はすごくいい経験ができたと思っています。

 

魚も人も知っていた

堤防にも磯にも魚の気配がまったくなくなってしまいました。あんなにいた魚が跡形もなくいなくなってしまったのです。僕は一度ホテルに戻りました。雲行きが急に怪しくなりだしました。間もなく雷と共にものすごい雨が降り出します。あっという間に道は水があふれかえり村人たちは大はしゃぎしています。でもすぐに大慌てに変わりました。道は川になり濁流と化しています。様々な物が流れ落ち家の中ににまで浸水し始めています。車は立ち往生し村人が押して水のない場所に避難しています。海はあっという間に真っ茶色に変色し漁師が船を避難させています。時間にして30分ほどのことです。

きっと魚たちはこの雷雨を知っていたのでしょう。どうりであれほどいた魚がいなくなったはずです。思えば堤防の上で何人かの漁師が魚はいないよと言ってきたのです。僕は何を言っているのかわかりませんでした。でも昨日は夕方まで漁をしていた彼らが船を浜にあげたり、堤防につないだロープを結びなおしにきたりしていたのはこの雷雨をわかっていたのではないかと思いあたりました。自然に暮らす人々の洞察力の凄さを知りました。彼らもまた嵐が来ることをわかっていたのです。昨日はあんなに活況があった屋台も店じまいしたままです。彼らには僕らが失ってしまった野生の勘が備わっているのでしょうか。人間まだまだ捨てた物ではありません。

 

IMG_5745 IMG_5728 IMG_5746ピカリータス

 

 

 

おかみさんはタライからひと摑みの小麦粉をとると手のひらでくるくると丸めポンと叩いて生地を押す鉄板の上に置く、蓋をぎゅっと押すと見事に厚みも大きさも揃った生トルティーヤが現れる。それを熱した石窯の上に置とすぐ香ばしい香りが漂う。裏返すとうっすらと焦げ目のついた生地がプクーと膨れて湯気が噴き出す。彼女の手にかかるとまるで魔法のように1種類のタネから様々なトルティーヤが生まれてくる。

ピカリータスはタコスと同じ大きさだけど少しだけ生地に厚みがある。片面が焼けると鉄板からフキンの上に移し、縁に具がこぼれない様にするために指で土手を作っていく。できあがったトルティーヤを鉄板に戻すとどの具を入れるか彼女が聞いてくる。鶏肉、魚、ジャガイモの具を一つづつ作ってもらう。仕上げにチーズをのせて出来上がり、具材から出たスープが絶妙に彼女の指の跡に吸い込まれまったくこぼれることがない。すべてを味わいつくせる。

僕が食べている間も彼女の厚みのある優しさに溢れた手は休みなく働いている。これまで何万回と作ってきた手はたがうことなく仕事をこなし、流れる様な所作はいつか日本で見たおばあちゃんのそれと同じだ。こうした良い、働き者の手で作られたものでまずかったためしがない。愛情という隠し味が効いた他では食べられない味になる。年端のいかないムスメがお母さんを手伝っている。きっと彼女もまたおいしいトルティーヤの作り手になるのだろう。

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よろず走り書き13」への4件のフィードバック

    1. HIDEKI 投稿作成者

      あおきさん
      美味しそうに思ってもらえましたか!記事は良かったということだと思うことにします。美味しそうに伝えることはとても大変です。今回は味ではなく作られる過程をイメージしてもらえるかなぁとちょっとしたチャレンジでした^ ^

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  1. けんいち(ぽこけん)

    すごく読み応えがあります。良い旅をしているんんですね。
    釣り具の件など、自分ならすぐに取られないように仕舞ってしまいますが、それではこんなドラマは生まれませんね。子供たちのやり取り、すばらしいですね。海に入って行く子供たちのビデオも臨場感あります。感動しながら読ませていただきました。

    私にとって、ここプエルトアンヘルは、毎日釣りを楽しんだ美しい漁村でもあり、パソコンが壊れてしまった苦い思い出の町でもあります。懐かしいです。

    返信
    1. HIDEKI 投稿作成者

      まったくドジばかりですが、経験がつめていると思っています。釣りは世界共通の娯楽なんですね。すぐに仲良くなれるツールです。ブログのあり方についてはいつも悩みます。ちょっとしたことでもいいので役立つ情報も発信できればいいのですが・・・でもけんいちさんにそう言っていただけてとても喜んでます。

      返信

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