嵐を呼ぶテント

 

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HPから借用しました

昔の日本家屋には「土間」がありました。そこは家の中と外の間にある不思議な空間です。妖怪が潜んでいそうなヒンヤリとした空気、お三度の時はトントンという軽快な音とともに煙が立ち上ります。また外出帰宅の準備をする場所として上がり框がしつらえてあり履物の脱ぎ履きをする所です。「土間」は外履のまま行き来ができます。屋内ではできないことを行う作業場としても重宝されてきました。

欧米諸国では外と隔てているのは玄関扉だけです。靴のまま家にあがり靴を脱ぐのはベッドに入る時です。

このスタイルの違いがテントにもあらわれています。雨の多い日本ではフライシートで作る前室を大きくとったテントが好まれますが、海外ブランドの物は最低限のフライがついているものが多いです。
日本人にとって靴を脱ぐことはくつろぎの空間に入ることを意味します。フィールドからテント内に入ることは家に上がるのと同じ意味を持っています。ですから日本人は無意識のうちにテントにも玄関(土間)が欲しいのではないでしょうか。玄関で靴を脱ぎ、持ち物を置いておける場所がないと不安な気持ちになるのでしょう。その感覚が広い前室の作りにつながっていると思います。

テントを選ぶにあたり重視したのは生活の基本である衣食住の快適性でした。旅の間の住環境は安宿かテントになります。毎日の疲れをキチンと癒せる快適性と持ち物の収納。大切な所帯道具は外に置いておけません。
居住空間、設置のしやすさ、対風雨、重量、カラーいろいろと考えて最終的にアライテントのドマドーム2とMSRハバハバに絞りました。
アライテントは新井 睦氏のもと創業以来40年以上にわたり職人の手で国内生産されてきました。「ウラヤマからヒマラヤまで」のフレーズ通りメイドインジャパンの代表格です。一方、MSRは1969年ラリー ベン パーシー氏によって創設され「すべての登山家のバックカントリーでの安全を守る」を目的に様々な製品を送り出してきた世界的メーカーです。どちらも優れたテントですが一長一短はありました。3回ほど青木女史のもとへ赴き旅先の気候条件、テントに求める性能を伝え実際にテントを立ち上げ喧々諤々を繰り返しドマドームに決めました。
アライテントは10年来使い慣れたメーカーでその性能の高さは折り紙付きです。ただしこのテント、嵐を呼ぶんです・・・僕の場合ですけど。

小梨平に着いた僕は、雨の匂いを嗅ぎとっていた。冷たい風がダケカンバの葉を裏返し、枝から引きちぎろうと息巻いていた。川沿いを避け林の中にテントを張り、念のため全てのペグを打ちフライシートの綱をしっかりと張った。
夕食を食べていると雷鳴とともにバケツをひっくり返したような雨がすべての音をかき消した。やがて川の音があきらかに変わり、バキバキと木が折れる音がしている。テントから外を覗くが見えるのは暗闇だけ、林の中にあっても凄まじい勢いで雨粒がフライシートを叩いた。
夜半に雨はやんだ、様子を見に外に出ようと踏み出した足が冷たく濡れた。テント周りに掘った溝がうまく水を逃がしてはいたがテントへの浸水は確実だと思った。
翌朝は快晴、気持ちの良い朝だった。恐る恐るマットをめくった僕は驚いた、ほぼ浸水はなくシュラフカバーは乾いていた。辺りを偵察がてら見に行くと川沿いの木々は倒れ道を塞いでいた。濁流と化した梓川は見たこともない程川幅を広げていた。

年が明けた厳寒の上高地。トンネルを抜けたあとスノーシューを履きソリに乗せたキャンプ道具を引っ張って歩いた。一面の銀世界にワクワクしたが、またもや上高地は厳しい試練を与えてくれた。吹雪になった夜、雪で作った壁と反対から吹き付けられ、テントはバタバタと音を立ててひん曲がり、今にもポールが折れそうだった。吹きだまりがどんどん大きくなりテントの壁を押してくる。ちゃんと囲い作りを最後までやらなかったことを悔やんだ。テントの内側から体で溜まった雪を押し出した。
翌日は雪が深くて帰れなかった。小止みになった隙にテントをトイレの外壁の脇に移動して三方に雪壁を作った。幸い食べ物と燃料はタップリある。慌てて逃げ帰るより晴れるのを待つことにした。
風雪は再び強まったが壁がしっかり防いでくれた。同じ本を4回読んだ次の朝、恒例行事となった氷掃除。テントを叩いて壁についた結露をたたき落とす。底面にたまった氷をカップにすくって放りだした。真っ青な空がものすごくキレイだった。

この2回のキャンプで使用したのはアライのエアライズ。四国一周自転車の旅でも大空に使わせました。このテントを使うとなぜか嵐に遭遇します。でもどんな悪条件下で使用しても決して不快な思いをさせません。台風接近の四国で夜中に大空があわてて僕を起こしたときもフライシートをチェックして「大丈夫だ」と一言で済ませました。翌朝「濡れたか」と聞くと「大丈夫」と答えていました。僕のビビーはじっとり濡れちゃいましたが。そう僕はこのテントの実力をイヤと言う程知っているんです。MSRのハバハバはあこがれのテントです。軽量、前後についた前室、メッシュを程よく配置した快適性、広い室内と白を基調としたカラー。一度は使ってみたいテントでしたが南米の雨期や強風を考えるとやはりアライテントでした。

なにより僕には日本人の血が流れているようです。生活空間が土間によって明確になり、くつろぎの空間を小さなテントに確立することができました。茅葺きのような屋根の高さ、自然を身近に感じることができ、板の間を連想させる底面のカラー、縁側越しに眺めているような入り口の形状に和風建築の魅力を感じます。扉を開けて外に飛び出していける洋風建築の開放感も憧れますが、あの「土間」の持つ独特の雰囲気が見知らぬ土地でも僕を癒してくれることを期待します。

アライテント ドマドーム2

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4 thoughts on “嵐を呼ぶテント

  1. けんいち

    ドマドーム、良い選択だと思いました。
    私は、夫婦での4年間のユーラシア・アフリカバイク旅行でアライテントのエアライズ3とデラックスフライシートを使いましたが、前に出っ張った前室があることでどれだけキャンプライフが快適だったことか。ポールも改良されて以降は強度が増し、毎日のように使っても大丈夫でした。アライテント、大変信頼できるテントだと思います。

    値段が半額で済むし、今回ひとり旅になることから、今回の北・中・南米用のテントはモンベルにしましたが、4か月たたないうちに、1本ポールの接続部が折れてしまいました。モンベルが悪いというのではなく、ジュラルミン製のポールは寿命早いのだと思います。現在、補修して使っています。アライにくらべ、テントの広さに対し、仕舞った寸法が大きい(布が厚いのでしょう)のも難点ではあります。値段が安いのでそれでも良しと割り切るしかないです。

    長旅で装備にお金を掛けられるなら、やはりアライだと思います。ドマドーム快適そうですね。

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    1. HIDEKI 投稿作成者

      けんいちさん
      ありがとうございます。実際に旅をされている方からそう言ってもらえると心強くなります。土間の部分をテントスペースに考えればエアライズ3もありだとは思ったのですが、ドロドロになったバックをテント内に入れることに少し抵抗があって決めました。
      先日、WTN-Jのイベントでコレさんの講演会に参加してきました。コレさんはもちろんのこと、帰国ホヤホヤの後藤さんともお話することが出来てとてもいい勉強になりました。みなさん既にけんいちさんが帰国することをご存知で情報収集力の高さに驚かされました。地図上でLAまでは近いとはいえ、かなりの距離がありますから気をつけてください。帰国され、肩の具合が良くなりましたら是非一度お会いしてみたいです。日本までの長旅ですね、良い旅を ¡Vaya con Dios!

      返信
  2. あおき

    ふんふん・・・
    アライテント、強いですね。
    確かにこれだけ普及している中、アライテントのポール修理依頼はあまり受けたことがないです。
    悪天候時にその道具の威力が初めてわかりますね。
    先日剣岳のテン場で吹き飛ばされる程の強風に一晩中合い、翌朝ポールが曲がっておりました。
    山岳テントとしては天井がとても高いテントを使っていました。
    着替える時など居住性は非常にいいのですが、強風時にはやはり影響を受けやすい。
    天候変化に備えて張る場所を見極めるべきだった。
    初歩的な事で笑われそうですが、フィールドに出るたび
    勉強になります。

    返信
  3. HIDEKI 投稿作成者

    あおきさん
    まったくです。やはりフィールドで使うのが一番わかります。
    自分の予想外のことが起きたときに道具の真価が問われますね。
    アライテントはとてもよく考えられていました。幸い嵐は呼びませんでしたが
    実際に設置してみて強よそうなのはわかりましたよ。パタゴニアでの使用が楽しみです。
    ペグが純正はイマイチですね。今度見に行きますのでよろしくお願いします。

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