四国一周自転車の旅を終えて

四国の旅が終わり家でのんびりしています。暑い日は海からの風が気持ちいいんです。縁側に寝そべって足を外に放り出すと風が足裏をなでていきます。まるで子猫か犬の子に舐められているようでいつの間にかウトウトと微睡んでしまいます。

自然の風にはこんなにも優しさがあるんですねー。風が立てる木々のざわめきや、ツクツクボウシが鳴く声、近所の百姓が井戸の水をくみに来る音でかろうじて自分がこの世界にいることを自覚できます。

西日が当たりだして影が長くなってくると風は少しだけ強さを増します。庭に出て水をたっぷりと打ちながらいろんな雑事に想いを馳せます。

この夏は初めてと言っていい程、息子達と濃密な時間を過ごすことが出来ました。特に大空と巡った四国は強烈な体験でした。大空は忍耐強くペダルを踏み続けました。愚痴をこぼすことも言い訳をすることもなくただ黙々と前へ。

時に苦しそうな息づかいが背後から聞こえましたが離れてもまた喰いつく様についてきます。日を追う毎に大空は強くなっていきました。自転車の性能差をモノともせず、ある日、上り坂で軽々と追い越されました。

悔しくもあり、でも嬉しい気持ちがわき上がりました。子が親の先導なしに先に立って進んでゆく後ろ姿はとても力に満ちあふれ、眩しいほど輝いていました。親のことを子が抜く瞬間に立ち会えたことがとても幸せです。

走りきったことがどれほど大空の自信になったことでしょうか。1500kmを越えるこの旅で彼が得たものはとても大きなものであったと確信しています。台風にたたられた毎日で次々とトラブルが起き、自転車や装備の故障、足の痛みや疲れが彼を苦しめていました。アルミ製の安バイクでは振動が容赦なく彼の体にダメージを蓄積させます。雨がしみて不具合を起こしたライトは消え、防水加工されていないバックの中は水浸しです。ジップロックに穴があき大切な納経帳に水がしみてしまったこともありました。でも大空は全てのものをとても大切に扱っていました。

毎日、タイヤの点検をかかさず、きちんとパッキングをして雨に備えていました。たとえ十分な装備でなくとも自分のものを大切にする気持ちは見ているこちらが教えられている気になりました。旅を終えて大空はとても成長しました。若者だけが持つ力強さと可能性に満ちた未来を僕はとてもうらやましく思います。

水を打ち終えて蚊取り線香に火をつけます。除虫菊の香りがあたりに漂います。ヒグラシが鳴き始めました。日が暮れたあとの虫の鳴き声が少し大きくなっています。今年の夏も終わりが近づいてきたようです。

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