人種差別に思うこと

”お前は黒人が嫌いじゃないのか?”体の大きな黒人に唐突に質問されました。僕はここが南部なんだということをこの時はっきりと認識できました。ルイビルはケンタッキー州の北部に位置する中ぐらいの規模の町です。確かシンシナティレッズの傘下のマイナーチームの本拠地でバットとバーボンで有名な場所です。ケンタッキーフライドチキンの博物館とモハメドアリの記念館があるだけのなんてことのない町です。まさかこのような質問を受けるとは思いませんでした。

僕は”気にしないよ。僕は日本人だから黄色いでしょ、たまに人種差別を感じるよ。でも、ちょっと驚いたよ、まさかこんなストレートな質問をされるとは思ってもいなかったから”と言うと彼は何も気にせず”日本にいきたいなぁ、もし日本に行ったらどこを見ればいいか教えてくれよ”と訛りの強い英語で聞いてきました。人種差別がいまだに残っている事が僕にはショックでした。頭ではわかっていました。ダウンタウンを車で廻っている時もそれは感じていたのです。黒人がいる場所、白人がいる場所、両方が混じっている場所がありました。表立ってはいないけれど住み分けをしている事は容易に想像がつきました。何かを訊ねても露骨ではないけれど明らかにそれとわかる扱いを受ける事がありました。アングロサクソン至上主義が一部の白人に残っているのだと感じます。

一体なぜ白人がこのように考えるようになってしまったのかを考えました。歴史的に見ればアフリカから奴隷船で連れてこられた黒人が家畜のように扱われてきた事が考えられます。多くの映画やドラマで演じられてきたこの問題は大きな要因の一つでしょう。でもそれでは根本的な解決になっていないような気がするのです。僕は白人が有色人種を恐れているような気がしてならないのです。彼らは十分な教育を受け、賢く、倫理的な考え方をする事ができます。それにもかかわらずこのような差別が残り、彼らの嫌悪感にさえなっている理由は”恐れ”ではないかと思うのです。遺伝的に見て白人は弱い部類に入ります。黒人のみならず茶色、黄色の人種と交われば彼らの白い色は簡単に失われてしまいます。白い肌に色がつき、髪がちじれる事に彼らは恐怖を抱いたのではないか、アメリカに移民が大量に押し寄せていた時代でさえイギリス出身のアングロサクソンの人々はイタリアやその他の地域の人たちと一線を画していました。もともと弱いという事を知っていた彼らの精一杯の抵抗だったのだと思うと合点が行くのです。彼らは自分たちの劣勢を承知していたからこそ、優位性を維持するために色のついた人種を見下した態度で接していたのではないか、純血を維持する事が彼らのアイデンティティーを維持していくためには必要だったことが根底にあるのではないかと思い当たりました。

それは戦争でも現れています。アメリカはたくさん戦争をしているように思いますが、実は戦死者数がとても少ない国です。アメリカで一番戦死者を出した戦争は国内の内紛である南北戦争です。その死者数は60万人、第一次大戦では30万人、第二次大戦では負傷者も入れれば113万人というデータがあります。一方、ソビエト連邦の戦死者数は2千万を超えていますし、フランスは1次大戦560万人です。ちなみに日本は線死傷者646万人です。これはアメリカの地勢が他国に攻め込まれにくい事もありますが、ベトナム、アフガニスタンでもアメリカは撤退を余儀なくされています。戦死者数の増加に耐えきれなくなったためです。日本を含む上記の国々では人々は単一で同じ文化を持っています。つまり連帯意識がとても強く、自国を守るために犠牲を払う覚悟がある国々です。一方アメリカの白人の数が少ないため犠牲を払う事に耐えきれなくなってしまったのです。彼らは自分たちの純血が減る事を恐れるあまり撤退を決めたのだと考えました。そうすると全部が合点が行くのです。彼らは自分たちが民族的に弱い事を知っているのです。だからこのような差別をしたり、自分たちが優位である事を誇示するために戦争を頻繁に行っては適当なところで理由を見つけて負けない戦をしているのではないかと思うのです。

文化的にもそれはあらわています。タバコ産業がスパニッシュの持ち込んだ大麻に押されるようになってくるとドラックに指定してタバコ産業が維持できるように法を改正しました。タバコは香りを嗜む紳士淑女のものといった間違った情報操作をして産業の維持を試みました。しかし近年、健康被害が明らかになるとともにその考えを改めざるを得なくなり、大麻を合法化する動きが出ています。麻薬の価格を下げて密輸を防ぐといった理由もあるでしょうが、自分たちのエゴを通せなくなってきたのが大きな理由に思えてなりません。自動車産業でも同様です。自国の産業を維持するためだったのが彼らは競争に負けてしまいました。アジアの小国の車に負けてしまったのです。中東を容易に懐柔できると考えた彼らは見事にしっぺ返しを食らいました。同時テロを受け彼らはその威信をかけて様々なでっち上げとも言える事をして優位性を示そうとしています。また中南米からくる移民が安い労働力で働く事を利用するだけして、彼らの事をこき下ろしています。黒人についても怠け者だと決めつけています。ことごとく自分たちの利益のために他の文化を否定するかのような見解を出しては正当化してきたのです。

アメリカは近年人種の多様化を抑える事ができません。少数派となりつつある白人が懸命になる理由もわかるのです。たとえそうであっても特定の人に自分を人が恐れたり嫌がったりしていると思わせる事はあってはならない差別だと思うのです。人種差別を肌感覚で認識できた事はアメリカを旅する上でとても大きな意味がありました。全てのアメリカ人がそうでない事はこれまで知り合ってきた人々が物語っています。戦死者数が表すように連帯意識が希薄なアメリカでは平等という言葉は白人に適用されているのではないか、そう考えると人々の暮らしが見えてきたような感じがするのです。そして世界からなんとなく嫌われている事も納得できるような気がします。いつかは少数派になってしまうであろう白人が運命をどう受け止めていくのかとても興味が湧きました。はたして彼らに未来はあるのかそれは彼らの今後にかかっていると思うのです。
冒頭に書いた黒人の彼はこれから仕事なんだと言いました。”1日にどれくらい働くの”と聞くと”とっても長いよ1日中みたいに”と答えました。どのくらいかはハッキリとはわかりませんでしたが、そこには白人は9時5時の仕事しかしないんだと言外に言っているのがわかりました。僕は”良い1日を”と言ってあげる事しか出来ませんでした。偉そうな事を言ってはみても僕もまた何もできない一人である事を感じます。こうした問題をはかる事のできるものさしを持ちたいものです。

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人種差別に思うこと」への2件のフィードバック

  1. あおき

    お客さんでむかつくアメリカ人。
    いきなり英語でベラベラ早口にまくしたて、
    通じないとわかると即座に ここは誰か英語話せるひといないの?誰も?
    と馬鹿にしたように大声を張り上げ、やれやれと薄笑いして去っていく。
    たまにいるんです。
    あなたは英語以外しゃべれるんですか?
    たまたま母国語が世界共通語になっただけで偉そうにしているアメリカ人が大嫌いです。

    返信
    1. HIDEKI 投稿作成者

      あおきさん
      彼らの頭の中は英語というかアメリカがすべてだと考えている節がありますよね。事実アメリカにはすべてがあるんだと思います。こちらでは周りを気にせず大きな声でしゃべる人が殆どです。小さな声では通じない言語が英語なんだと思いました。そうです。彼らは英語以外しゃべれません。スペイン語は結構いけるようですが世界中どこへ行っても困らない言語を使っているせいでしょうか必要性を感じないのでしょうね。日本以外の東南アジアでは英語が通じることを考えれば日本はとっても不思議な国なんだと思います。
      アメリカではこちらが英語ができようができまいが構わず英語のみ、日本でもそんな風に接することができればもっと楽になるのでしょうね。ご健闘を祈っています(笑)

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