よろず走り書き3

豊饒の源

imageアンカレッジから東へ100マイルほど走ったところに氷河がある。全長40キロにも及ぶその流れの先端に行くことができる。目の前に白い棚が見えた。脇道に入り氷河の先端に向かう。足元はすでに氷になっていて石がうっすらと乗っかている。透けて見える大地は紺碧の青で染まっていた。その先の白い壁に向かう、日の光にその蒼さを一層鮮やかにした氷河の表面はざらざらとして不揃いの氷がジグソーパズルの様に絡み合って形作られている。ひとかけらつまみ出そうとするが少しグラつくだけで取れない。思いきり叩くとポロリと落ちた。口に入れるととても硬いのが分かる。何百年か何千年の時を経て先端まで押し出されてきた氷はいつのものなのだろうか、まったく砕けることなく渋みのない透き通った味が口に広がった。

image氷河の表面には幾筋もの細い隙間が空いていてその奥に青やねずみ色、透明の水が流れている。ねずみ色の水はまるで火山灰の様に細かでねっとりとした泥の色だ。ここに来る途中で見た川の色だ。この細かな泥を含んだ水が幾重にも重なって海へと流れてゆく。こんな北の冷たい海にもかかわらず豊かなのはきっとこの泥のおかげだ。川の流れの始まりが海の豊かさを作っていた。アラスカには無駄がない。野火で焼けた森も灰が養分となりすぐに下草が豊かに茂っている。森の中で大木が倒れればそれに苔がつき、虫がやってくる。その虫を食べに小動物が現れそれを狙う鳥や動物が他から種を運んでくる。川にはシャケが上り、子孫を残すためその身を削りながら上流へと向かう。やがて産卵が終わると彼らの生涯は閉じ、その体は腐り果ててゆく、その腐った体にウジが湧き小魚の餌となる。腐り果てた親の体は養分となり森を豊かにする肥やしとなってゆく。すべての生命が繋がってアラスカは成り立っているのだと分かる。人間の住む街にいても動物が普通に暮らしの一部となり、白頭鷲やクマ、ムース達がすぐ傍に目をやると存在する。世界遺産に登録された途端にこれまで通りの暮らしができなくなってしまった白神山地のマタギ達や魚の遡上を妨げる河口堰を作られ漁ができなくなった長良川の職漁師達はこれを見たらどの様に感じるのであろう。

自然との共存にはルールがあり、人間と動物は対等の立場で自分たちの生活圏を分かち合っている。自然大事もいいが、もう少し互いのことを考えた方法を見つけ出すことはできないものであろうか。ただし、いいことばかりでもない。ハイウエイにはリスやマーモット、鳥が引かれて潰れた肉塊と化して転がっている。それを狙いにくる狐やタカ。逆に私たちが森に入ればグリズリーや黒クマに被害を受けることも後を絶たない。しかしこうしたことをしたクマ達はレンジャーによって殺処分となっているのも現実だ。ウイスラーの有名なクマも残念ながら例外とはならなかった。

image悪天候へ
ブログぽこけんのけんいちさんが撮った1枚の写真がとてもカッコよかった。バイク乗りにはバイク乗りの写真の撮り方があるようでタケヤンの写真もとてもよい。両氏の腕の良さももちろんだが構図がいい。ならば僕もと思い撮った1枚がこれだ。まったくけんいちさんと同じで恐縮だが僕はこの写真がとても気に入ってしまった。遥か向こうに伸びる道、遠くには雨雲が垂れ込め一目で雨だと分かる。それでも今日の寝床を探しに進む決心にあふれていて自分が成長しているのが分かる写真になった。
image氷河に長くいたため出発したのは3時半、実はここでもキャンプができたのだが、移動距離が短すぎる。今後の旅程とビザのことを考えるとあまりのんびりとはしていられないので先に進むことにした。天候は悪くなり、峠を越える頃には冷たい雨がばちばちとヘルメットを叩いた。山を降りると雨は止んだが雨雲がそこかしこに見えている。灌木が広がる大地に強い風が吹き、バイクが反対車線へと持っていかれそうになる。身体は冷え、震えが止まらない。たまらず道の端にバイクを寄せた時に撮ったのがこの一枚。1ヶ月前の僕ならためらわずモーテルに逃げ込んだところだが今日はテントと決めていた。キャンプサイトも調べていないのでわからなかったがなんとかなるとわかっていた。150マイルほど行った場所にレクレーションサイトを見つけ森の中にテントを張った。蚊が多く水は沸かさなくては飲めないと書いてある。当然シャワーもなし。冷え切った身体を即席麺で温め早々にテントに入った。それでもシンと静まり返ったテントサイトはとても快適でホステルの2段ベッドでは到底叶わない寝心地を提供してくれた。

image国境にあるドライブインにて
アラスカからカナダへの国境越えの前にガソリンを給油しておこうと立ち寄ったラストストップと書かれたドライブイン。案の定カードが使えず店内へ。レジ越しにHelloと言われガソリンを入れたいと言ったら何番だ…何番なのと嫌そうに聞いてくる。デップリと太ったいかにもといった感じのアメリカ女、まるで映画にでも出てきそうな感じ、ゾンビ映画のバイオハザードなら容赦なく撃ち殺してしまうタイプ。8番と答えてカードを出すとIDを出せと言う。そんなことはこれまでなかったし聞いたこともない。バイクに戻りビシッとカウンターにおいてはいどうぞと言うとマジマジとパスポートの顔を見比べている。憎たらしい。ガソリンを入れ支払いをすると他にはなにも買わないのかと言う。こんな店では絶対に買ってやるもんか。コーヒーでも飲もうかと思っていたがすぐに国境に向かう。

image国境
出るもの拒まずのアメリカは素通り。メキシコに抜けるときは出国を忘れないようにしないと不法滞在となり次に入れなくなるので気をつけなければならないそうだ。しばらく行くとカナダのイミグレが現れる。この間25キロ程の道はどちらのものなんだと考えてしまった。
窓口の前にバイクを止めるとあんちゃんが出てきてどこに住んでる。このバイクはお前のかと聞いておしまい。蚊の大群がワラワラと出てきて襲いかかるので長いこと相手にしていたらボコボコの顔になってしまうからかもしれない。

imageビジターセンターによりキャンプ場の地図をもらう。湖の側のキャンプ場はクマが多発しているのでやめたほうがいい、こちらがいいと教えられたキャンプ場へ向かう。濡れたテントと寝袋を乾かしている間、近くの池に行き泳ぐ。冷たくて気持ちがいい。ここらの水もやはり赤くて白い生地が茶に染まってしまう。
冷えた身体を焚き火で温める。ここのキャンプ場は薪がタダなのでぶっといマキを豪快に燃やしてやる。水場がないので米は炊かない。タコス5枚とスープ。

今日の一言
クレジットカードでガソリンを入れていますがなぜだか使える機械と使えない機械があります。店の中に入りポンプを入れてもらい給油しています。やり方は慣れたものですが、なぜなんだろうかといつも思ってしまいます。ついでにコーヒーを買うことが多いのですが、これがまた薄くていかにもアメリカンコーヒーです。僕はもっとガツンとする味が好きなのでスタバがあるとついつい無駄遣いをしてしまうのが困りものです。でもスタバのブルードコーヒーときたら一口ではぁ〜となってしまいます。

imageアメリカを出てカナダに再々突入です。さすがに国境付近は人気がなくムースをたくさん見ることができました。ただこの4日間ずっと雨に祟られています。秋が忍び寄る気配が濃厚で、雨と季節との追っかけっこのようです。日中でも寒く、手袋は冬用を使っています。雨も冷たく体の芯まで冷え切ってしまうのにねをあげそうです。早く南へ、どちらに向かうかはまだ決めていません。

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よろず走り書き3」への2件のフィードバック

  1. あおき

    どうもです。
    ムース。。見たい。
    空が水面に映ってきれいや~

    返信
    1. HIDEKI 投稿作成者

      あおきさん
      ムースは近くで見ると車より大きいんではないかしらと思うほどでした。そんなに大きいくせに藪にちょっt入っただけでうまく景色に同調して見えなくなってしまうんです。野生動物ってすごいなぁと感心しました。

      返信

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